詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1416 『3回忌』

2024/07/08

  安倍晋三元内閣総理大臣が参院選の応援演説中に銃撃されて亡くなったのは、2022年7月8日でした。あの悲劇から丸2年、3回忌を迎えました。


  私は追悼演説の中で憲政の神様・尾崎咢堂の名言「人生の本舞台は常に将来に在り」を引用し、「安倍さん。あなたの政治人生の本舞台は、まだまだ、これから先の将来にあったはずではなかったですか」と、問いました。


  政治家としてやり残した仕事。次の世代へと伝えたかった思い。引退後に夫人と共に過ごすはずであった穏やかな日々。そのすべてを一瞬にして奪われた無念さはいかばかりであったか。私も安倍さんの享年67歳となり、改めて元総理の非業の死を悼み、哀悼の誠を捧げたいと思います。


  所信表明演説、施政方針演説、国連総会における一般討論演説など様々な演説を経験してきましたが、安倍さんに対する追悼演説はわが政治人生で最も難しい演説でした。悶絶しながら演説の草稿を練りました。その基本は柔道精神から見出しました。


  私は柔道2段です。寝技は政治家なのに苦手です。名誉6段のプーチン大統領には勝てないかもしれませんが、講道館柔道の精神はプーチンよりも理解しているつもりです。


  講道館を創設した嘉納治五郎先生は「自他共栄」を説きました。相手がいるから稽古ができる、相手がいるから試合ができる、自他ともに成長し栄える世の中を作ろうという考えです。私も安倍さんという相手がいたお陰で、言葉と言葉、魂と魂をぶつけ合い、火花散るような真剣勝負をすることができました。


  自他共栄の精神で激しい論戦をした政敵への敬意を示しました。死は究極のノーサイド。私は生前の安倍さんと、政治的な立場を同じくするものではありませんでしたが、その旅立ちにエールを送りました。分断の時代ならばこそ、追悼演説で良き美風を残したいという思いがあったからです。


  一方、裏金事件をめぐる安倍派幹部の対応は、安倍さんの同志中の同志であったはずなのに「自己保身」に終始しています。


  2022年4月、安倍さんはパーティー収入のキックバックを中止するよう指示します。ところが、ご逝去された後の7月末、ある幹部の提案から塩谷、下村、西村、世耕の幹部が集まって協議し、還付を再開しようと決定したとの由。


  以上は、6月18日、安倍派会計責任者が法廷で証言した内容です。安倍派幹部たちは衆参の政治倫理審査会において、キックバック再開について「知らない」「関係していない」と弁明しました。法廷の証言と偽証罪を問われない政倫審の弁明とでは、どちらが信憑性が高いか。自明の理です。


  安倍さんは自らが手塩にかけて育て、目をかけて登用した後輩たちに裏切られたことになります。天上で心を痛めていることでしょう。


  

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