詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1382 『所得減税?』

2023/10/30

  岸田総理は10月23日所信表明演説の冒頭で、「時代の変化に応じた先送りできない課題に一つ一つ挑戦し、結果をお示ししてきました。今後も、物価高をはじめ国民が直面する課題に、『先送りせず、必ず答えを出す』との不撓不屈の覚悟をもって取り組んでいきます」と、大見得を切りました。


  本会議場の議席に座りながら、立ちくらみがしました。防衛力の抜本的強化や次元の異なるこども・子育て政策は、兆単位の財源論を先送りしているではありませんか。お品書きを時価としか書いていないお店に入ってしまったような強い不安を、国民は岸田政権の財政運営にも抱いていると思います。


  岸田総理は続いて「経済、経済、経済」と連呼し、「私は、何よりも経済に重点を置いていきます」と、高らかに宣言しました。あまりにも実態とかけ離れた空疎な言葉でしたので、今度は議席から滑り落ちそうになりました。


  国民生活や事業者の経営を圧迫している円安・物価高を長い間放置してきたのは一体誰ですか。総理が経済対策の策定を指示したのは、9月26日です。また、正式にまとまるのは11月2日だそうです。指示も遅いが作業も遅すぎます。


  衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の補欠選挙(10月22日投開票)直前の10月20日、総理は物価高対策の目玉として所得税減税を検討するよう与党政調会長らに指示しました。メディアは大々的に報道しました。


  ところが、約30分間の所信表明演説の中で、一言も所得税減税は語られませんでした。減税は考え抜かれた経済対策ではなく、思いつきの選挙対策だったのでしょう。典型的な愚民思想です。


  そもそも所得税減税は浅はかです。所得税を納めていない低所得や高齢の非課税世帯には、減税の恩恵が及びません。いずれにしても具体的な減税規模や期間、対象は年末にかけて与党税制調査会で詰めることになるでしょう。


  減税は法改正を伴うため、年明けの通常国会で所得税法改正案が成立するまでは実施できません。企業も源泉徴収のシステム対応をしなければなりません。減税実施は来夏以降になるでしょう。


  総理は「急激な物価高から、国民生活を守る」と語っていますが、スピード感が決定的に欠如しています。立憲民主党は緊急経済対策として、中間層の現役世代を含めた全体の6割の世帯に3万円の「インフレ手当」を給付すべきだと提案しています。これなら今年中に給付可能です。


  最もわかりづらいのは、実施時期をずらすのかもしれませんが増税と減税が混在していることです。防衛財源確保のために所得税、法人税、たばこ税を増税する一方で、時限的とはいえ減税も実施するのはチグハグです。財政健全化も先送りするのでしょうか。


  場当たり的な浅慮で税制を変えるべきではありません。「税は国家なり」です。


  

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