かわら版 No.1374 『東南アジアを軽視するな!!』
2023/09/04中国では不動産市場が大幅に収縮しています。場合によっては、不動産バブルの崩壊によって、景気が大きく後退する恐れもあります。若者の失業率も高まっています。このように国民の政府に対する不満が溜まりつつある時、中国はそのはけ口を外に向ける傾向があります。
東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について、中国国内で激しい反発が沸き上がっています。国際会議のたびに、「核汚染水」のレッテルを貼り日本を激しく非難し、食の安全を守る姿勢をアピールする中国政府。習近平体制の求心力を高める狙いでしょう。
中国の日本人学校などへの投石、中国から発信された迷惑電話の多発など、政府に煽られた国民の過熱は度を越しています。わが国は科学的根拠に基づき、国際原子力機関(IAEA)とも緊密に協力し、透明性の高い情報発信を丁寧に粘り強く続けるべきです。
国内の不満が蓄積すると膨張主義にはしるのが中国ならば、逆に孤立主義に陥るのが米国です。新しい国際秩序を主導しながら、突然国内事情で手を引くようなことが過去にはありました。だから、米国の国際関与は不安定感を払拭できません。
古くは第1次世界大戦(1914~18年)で影響力を飛躍させた米国。ウッドロー・ウィルソン大統領は、国際機関を通じて秩序づくりを提唱しました。そして、1920年に「国際連盟」が発足しましたが、上院の反対で米国は参加しませんでした。
近年では、「アメリカ・ファースト」(米国第1主義)を掲げたトランプ前大統領による環太平洋連携協定(TPP)からの離脱がありました。前任のオバマ氏がTPPを推進する立場でしたので、米国の豹変は日本を含む関係国に大きなショックを与えました。
そして、今週の動きです。9月5~7日にインドネシアのジャカルタで東アジア首脳会議(EAS)など東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議関連会合が開かれます。ところが、「インド太平洋重視」を掲げるバイデン米大統領は欠席します。東南アジア諸国は失望していることでしょう。
インド太平洋地域の真ん中に位置する東南アジアは米中対立の最前線にあります。ASEAN加盟国は10か国であり、カンボジアやラオスのように明らかに中国寄りの国々もありますが、南シナ海の軍事化をめぐって中国と対立している国々もあります。綱引きの手を緩めたら負けです。
2012年11月、カンボジア・プノンペンで開かれた東アジア首脳会議(EAS)に、私の強い要請を受けてオバマ氏が米国大統領として初めて出席しました。しかし、トランプ前大統領はEASを4年連続で欠席し、東南アジアを軽視しました。バイデン大統領は昨年11月のEASには出席していたのですが…。
米国のアジアへの関与の一貫性のなさが露呈しました。日米韓首脳会談の折に、岸田総理はバイデン氏にEAS出席を強く要請しておくべきでした。