かわら版 No.1369 『異次元の少子化対策の財源について』
2023/07/24岸田政権の唱える「異次元の少子化対策」には、民主党政権の時から私たちが提案してきた政策も含まれています。たとえば、「保育士の配置基準の引き上げ」。2012年に野田政権下で与野党合意しましたが、10年以上粘り強く要望を続け、やっと実現できそうです。
ゼロ歳児の配置基準は3人の子どもを1人の保育士がみる3対1。ところが1歳になった途端に6対1になります。倍の数の子どもを1人の保育士がみなければなりません。これが5対1に変わります。
4~5歳児の配置基準は30対1です。小学校でも30人学級と言われているのに、生まれて間もない幼児30人に保育士が1人。このような現場で理想の保育ができるでしょうか。私も保育園出身ですが60年前も30対1でした。ようやくこの現状が25対1に変わります。
異次元の少子化対策には、その他にも様々な施策が盛り込まれています。
①児童手当の所得制限の撤廃、高校卒業までの延長
②出産費用への保険適用
③高等教育費の負担軽減
④両親向け育児休業給付の引き上げ
などです。
これらの対策を実施するには、年3兆円台半ばの財源を確保しなければなりません。しかし、財源の具体像は先送りされ示されていません。おいしそうなメニューは並んでいますが、料金は「時価」としか記されていません。こんな胡散くさいお店に入ったら、大変なことになります。
財源確保策は増税か社会保険料の引き上げか、歳出削減しかありません。岸田総理は「少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えない」と発言していますので、増税路線はなさそうです。社会保険料の引き上げも子育て世代を直撃するので、本末転倒になってしまいます。
消去法で選ぶと歳出改革しか残りません。非社会保障分野の歳出改革は防衛費増額の財源になりますので、社会保障分野の歳出改革で兆単位の少子化対策の財源を捻出しなければなりません。私は、非現実的だと思います。
診療報酬や介護報酬を抑制すれば、看護や介護の現場の処遇悪化につながります。人手不足を助長することになります。介護報酬は障がい福祉報酬と連動するため、障がい福祉予算もカットされかねません。
小泉政権下で社会保障費を毎年2200億円削減した結果、深刻な医療崩壊を惹起しました。お年寄りや病気や障がいのある人への給付を削ることは、生命の危機をもたらすことになるでしょう。人道に反する財源確保策です。再考すべきです。