かわら版 No.1365 『挑むか逃げるか』
2023/06/261月23日から始まった通常国会が、6月21日に閉会しました。この間、衆院予算委や財金委でたびたび質問に立ちましたが、今国会最後の質疑は6月9日の財金委でした。
黒田東彦・前日本銀行総裁とは数えきれないくらい論戦を交わしてきましたが、このたび初めて植田和男・日銀新総裁とお手合わせしました。異次元の金融緩和の後始末という極めて困難な仕事を引き受けたことに、まずは敬意を表しました。
そして、金融政策の正常化をするかどうかよりも、5年の総裁任期中のいつ政策変更するかが問われていると、私の認識を示しました。その上で、重要な判断材料となる物価動向の見極めについて質しました。
なぜならば、日本銀行は今後の物価上昇率について「今年度半ばにかけて高い確率で低下する。2%を切る」と見通し、だから金融緩和を継続する立場だからです。私は上ぶれするのではないかと、質問しました。
植田総裁は丁寧に答弁されました。黒田前総裁はかたくなで硬直的な対応に終始しましたが、新総裁は柔軟性があるという印象をもちました。事実、その後16日の金融政策決定会合後の記者会見で、「企業の価格や賃金の設定行動に変化の兆しがある」と述べました。
「兆」を前に挑むのか逃げるのか。「挑」と「逃」の字の違いはわずかですが、金融政策では雲泥の差になります。
質疑の後半では鈴木俊一財務大臣に対して、「異次元の少子化対策」について厳しく追及しました。古代中国の経書「礼記」は、「入(い)るを量りて出(いず)るを制す」ことを財政運営の要諦としています。が、岸田政権の少子化対策はその真逆だからです。
児童手当の拡充など当初3兆円と見込んでいた総額(=出る)は、総理の鶴の一声で5千億円も膨らみました。財源(=入る)は「実質的な追加負担は生じない」との一点張りで、事実上先送りです。
「入るを量らず出るを制さず」。いい加減な財政的枠組みです。しかも、「こども金庫」という名称の特別会計を創設することにしています。「なぜ一般会計では対応できないか」と質しましたが、明快な答弁はありませんでした。
私も12年前、東日本大震災の復興特別会計を創設しました。その際は所得税や法人税の増税、日本郵政株の売却などを細かく決め、約30兆円の財源を手当てしました。その経験から言えることは、特別会計は受益と負担の関係を明確にすることです。入るも出るも不透明な特会は無駄の温床になります。
財源確保の道筋が定かでないため、「こども特例国債」を発行することになりました。可愛いらしいネーミングですが、要は通常より短い期間で償還する「つなぎ国債」です。財源の確保を先送りし、将来世代の借金頼みで見切り発車するのは無責任過ぎないかと、大臣に問いました。残念ながら、暖簾に腕押しでした。
岸田政権は国民の負担に関わる課題については、真正面から「挑」まず、先送りで「逃」げてばかりいます。