かわら版 No.1363 『台湾総統選』
2023/06/12来年1月の台湾総統選への出馬を表明している台湾民衆党トップの柯文哲(かぶんてつ)・前台北市長が6月5日、私の国会事務所を訪ねてこられました。約1時間ほど意見交換し、相互に理解を深めることができました。
柯氏は1959年生まれ。台湾大学医学部卒の著名な外科医でした。小児科医の奥様との新婚旅行は日本だったとの由。2014年に台北市長選に無所属で挑戦して当選。18年再選。19年に中道政党、台湾民衆党を設立し、初代党主席に就任しました。
長年にわたり救命救急に携わってきたので、決断と迅速な対応は得意だとおっしゃっていました。とても親日的であるとともに、リーダーとしての資質を十分に備えた人物だと思いました。
総統選には台湾独立志向の与党、民主進歩党(民進党)は頼清徳(らいせいとく)副総統、対中融和路線の最大野党、国民党は侯友宜(こうゆうぎ)・新北市長も立候補する予定です。米国との関係を大事にしながら中国との対話を重ねる中間路線の台湾民衆党の柯氏と、三つどもえの争いになりそうです。
民進党の頼氏とは、昨年都内で会食しました。柯氏や頼氏が来日時に私に面談を求めるのは、民主党政権期に実は台湾との関係が進展していたことをご存知だからだと思います。
羽田空港のオープンスカイ構想に沿う形で、羽田と台北・松山空港の直通便が開通し、日台間の人的交流が増加しました。2014年に開催された故宮博物館展に向けて、2011年に議員立法で法整備もしました。
2012年9月、ロシアのウラジオストクで開催されたAPEC首脳会談で、内閣総理大臣であった私と台湾の連戦・元副総統との会談が実現しました。日本の総理と総統の代理出席者の会談は、日中国交正常化(日台は断交)以後、最も高位の会談となりました。この台湾との首脳級会談は、その後の安倍政権以後も引き継がれていきます。
私は総理退任後、2015年に台湾を訪問しました。当時の馬英九総統、野党第1党の民進党党首だった蔡英文氏(現総統)と面会し、東日本大震災での支援に改めて謝意を示しました。また、日本産食品の輸入問題での規制解除も申し入れました。
今後も台湾の要人たちとの対話は継続していきたいと思います。また、台湾有事のリスクが高まっている折でもあり、台湾総統選挙の動向も緊張感をもって注視していきます。どなたが総統になられても、私は台湾の世界保健機関(WHO)への加盟を断固支持します。環太平洋パートナーシップ(TPP)協定への加盟申請についても、歓迎する立場です。