かわら版 No.1354 『立つ鳥跡を濁したまま』
2023/03/20朝のビラ配りは寒さとの戦いから、花粉との戦いに変わりました。しばらくマスクを外せそうにありません。街頭活動後に国会に向かいます。3月15日は衆院財務金融委員会で、4月に任期満了となる日銀の黒田東彦総裁と質疑を行いました。
まずは黒田総裁が10日の記者会見で、異次元金融緩和は「成功だった」と語った真意を質しました。政策には常に効果と副作用があるが、金融緩和は雇用増などプラス効果が大きかったので成功だったと、総裁は答弁しました。
私は、2013年4月の黒田新総裁の記者会見がすべての出発点だと指摘しました。2年で2%の物価上昇目標を達成すると、パネルを使って政策目標を具体的に示しました。しかし、10年たっても2%目標は未達ですので、私は結果として失敗だったと断じました。
次に、同じく10日の記者会見で「国債と上場投資信託(ETF)の大量購入を反省しているか」と問われ、「何の反省もないし、負の遺産だとも思っていない」と答えたことを取り上げ、発言の撤回を求めました。
日本銀行が保有している国債は、本年1月現在で584兆円。政府が発行した国債の半分超を保有しています。債券市場は日銀がモンスター化し、市場機能は著しく低下しています。超低金利の長期化は産業の新陳代謝を阻んでいます。利払い費が抑えられ国債発行が容易になり、財政規律は弛んでいます。
国債は満期の到来を待って減らせますが、数十兆円も保有するETFをどう処分するかは大問題です。処分のタイミングや額により、各社の経営や株価に影響を与えます。次期日銀総裁の植田和男氏も、「大量に買ったものを今後どういうふうにしていくのかは大問題」と述べています。
大規模緩和の後始末は極めて困難です。後を引き継ぐ人を慮るならば、「何の反省もないし、負の遺産だとも思っていない」などと言えないはずなのですが…。黒田総裁は頑なに発言の撤回を拒みました。
野球の投手交代の際、降板するピッチャーが自らの足跡などのでこぼこを平らにならし、次の登板投手に後を託す光景を見たことがあります。
同様に黒田総裁にも「せめて国債市場のひずみぐらいは直していってほしいと思った」と、私の見解を述べました。これに対し総裁は、「(自身の)後継者のためにその時点では最善でないことでもやることはあり得ない」と、回答しました。
マイナス金利も長短金利操作(イールドカーブコントロール)も置き去りにしたまま、黒田総裁は退任します。「立つ鳥跡を濁さず」の精神を全く理解していない人でした。後事を託された人たちは、七転八倒の苦労をすることでしょう。