かわら版 No.1340 『反響』
2022/12/05朝日新聞の日曜朝刊に掲載される「朝日歌壇」には、毎週大量の投稿ハガキが届くそうです。その中から4人の選者が各々10首ずつ選び、計40の短歌が紙上に載せられます。
支援者の方からご連絡があり、11月27日の朝日歌壇の佐佐木幸綱選の第一首を見て驚きました。水戸市の女性が投稿した作でした。
政治とは言葉なのだとしみじみとにれかむ
野田氏の追悼演説
「にれかむ」とは反芻するという意味だそうです。安倍晋三元総理への追悼演説を国会で行ったのは10月25日。既に1か月以上経過しましたが、有り難いことに今もなお反響が続いています。
約23分間の演説の中で、「言葉」はキーワードでした。「暴力に打ち勝つ力は言葉にのみ宿る」など、16回も言葉という語を使いました。言論の府である国会で、言葉の力を再確認し復権したかったからです。
そして、私も今、政治とは言葉なのだとつくづく思います。言葉は人を鼓舞することも傷つけることもあります。前法相のように自らの言葉が致命傷になることもあります。岸田総理の「聞く力」「説明責任」など、誠のない言葉は虚ろに響くだけです。
追悼演説の反響は、国内にとどまらず海外からも出始めました。
2016年末、米国新大統領に当選したトランプ氏と安倍総理がニューヨークのトランプ・タワーで電撃会見し、大きなニュースとなりました。この会見をセットしたのが、米国で弁護士をしている村瀬悟氏でした。
その村瀬氏が私の追悼演説を英訳し、米国の知人・友人らに配布したところ、キャロライン・ケネディ前駐日大使や政治学者のイアン・ブレマーらが称賛しているそうです。これは意外でした。
私は柔道部出身ですので、講道館を創設した嘉納治五郎先生の教えである「自他共栄」をモットーとしています。相手がいるから稽古ができる、相手がいるから試合ができる、自他ともに栄える世の中を作ろうという考えです。安倍さんという相手がいなければ、論戦もできませんでした。この「自他共栄」の精神をベースに演説の草稿を練りました。
極めて日本的な内容だと思っていましたが…。深刻な分断に悩む米国社会だからこそ、政敵にも敬意を払う姿勢に共感を覚えるのかもしれません。いずれにしても、政治家冥利に尽きる反響です。