かわら版 No.1332 『為替介入は宝刀か?』
2022/10/11第2次岸田改造内閣が発足したのは8月10日。野党各党が憲法第53条に基づき臨時国会の開会を要求したのは8月18日。ずいぶん待たされましたが、ようやく10月3日から臨時国会が始まりました。
このように政府が憲法や国会を軽視することのないよう国民民主を除く全野党が共同して、「憲法53条に基づき議員の4分の1の署名で臨時国会を要求した場合は20日以内に召集せねばならない」と定めた法案を提出しました。自民党の憲法改正草案にも同様の規定があるのですから、当然賛成すると思うのですが…。
今国会も衆院財務金融委員会に所属することになりました。鈴木俊一財務大臣や黒田東彦日本銀行総裁らを相手に論戦を交わすことになります。10月に値上げが予定されている食品や飲料はなんと6500品目以上。さらに外食チェーン店でも次々と値上げが実施されます。物価高が最大のテーマになるでしょう。
物価高を助長しているのは円安。その円安の流れに歯止めをかけようと、政府・日銀はついに「伝家の宝刀」を抜きました。9月22日、24年ぶりに円買い・ドル売り介入が実施されました。外為市場ではこの日、1ドル=145円台後半から140円台まで円高・ドル安が進みました。1日の介入額は過去最大の約2.8兆円とみられています。
私も財務大臣時代に為替介入を決断した経験があります。マーケットで「過度な変動や無秩序な動き」があったので介入したのですが、当時は円高に歯止めをかけるための円売り・ドル買い介入でした。円買いか円売りかの違いはありますが、介入の難しさは私なりに理解しているつもりです。
その上で、敢えて言うとまずは今回の介入の意義がわかりません。米国など世界各国はインフレ抑制のため金融を引き締めていますが、日本だけは大規模な金融緩和を続けています。米国等は異例のペースで金利を引き上げていますが、日本は金利の抑え込みに躍起になっています。すなわち、円安になりやすい環境を自らつくりながら、円安阻止のための宝刀を抜くのはチグハグです。
私は、協調介入も単独介入も経験しましたが、単独介入の効果は明らかに限定的でした。今回の24年ぶりの円買い単独介入も、既に効果が剥落してきました。「145円」が防衛ラインと見なされ、投機筋の揺さぶりを招来する気がします。
米国はさらに利上げを続けるでしょうから、そのたびに介入するつもりでしょうか。外貨準備が介入の原資となりますが、弾切れリスクはないのでしょうか。
そして、最も本質的な疑問は、「世界で最も安全な資産」であった円が、なぜ通貨価値が低いことに悩むようになったのかです。
以上のような問題意識を、財金委で質していきたいと思います。