かわら版 No.1328 『憲法軽視内閣』
2022/09/057月の参院選期間中の遊説で、山際大志郎経済再生担当相が「野党の人からくる話はわれわれ政府は何一つ聞かない」と、発言しました。その傲慢と無知に呆れ返りました。
日本国憲法第六条は「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」と定めています。行政府の長は国会で多数決により首班として指名された上で、賛同しない少数者も含む全国民のために働く首相となるよう、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」(日本国憲法第一条)である天皇が任命するのだと思います。
次に憲法第七条では、国家の内政・外交に関する儀礼的な天皇の「国事行為」が十項目定められています。その五は「国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免…」です。
国会で指名された内閣総理大臣も首相に任命された国務大臣も、宮中における親任式で天皇から「親任状」を手渡されます。これは行政が国家・国民のため可能な限り公正に行われるよう、その責任者としての自覚を促す意義があると思われます。
すなわち、与党の話しか聞かないという山際大臣は、大臣の資質に欠けると言わざるをえません。しかし、8月10日の岸田内閣の改造で、再任されました。大臣失格者を続投させる岸田首相も、象徴天皇に任命される意味をわかっていないようです。
8月18日、野党は臨時国会の召集を求める要求書を議長に提出しました。「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議員の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」とする、憲法第五十三条に基く要求です。
憲法を守る気があるならば、早期に国会を開くべきです。しかし、岸田政権は9月27日に予定されている安倍元総理の国葬が終わった後、10月以降に臨時国会を召集する方針のようです。子どもたちの夏休みは終わりました。国会だけが長い夏休みを取っている場合でしょうか。
亡くなられた安倍元総理には心からお悔やみ申し上げます。しかし、ご葬儀の形式については様々な意見があります。国葬とする理由に関する国会や国民に対する説明が不十分で、その結果として国民の理解を得られていないのではないでしょうか。
新型コロナ対応では、感染者の全数把握を続けるのか見直すのかを自治体に「丸投げ」。国と地方の足並みが乱れぬよう国会がチェックすべきです。物価高騰への対策も急務です。
課題は山積しています。国会を早期に開会し国民への説明責任を岸田内閣は果たすべきです。憲法に明記された野党の要求の軽視は、野党の声に耳を貸さないにとどまらず、国会軽視であり憲法軽視です。憲法軽視を続けながら、憲法改正を主張しても説得力がありません。