詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1320 『日銀総裁のトンデモ発言』

2022/06/13

  6月8日、衆院財務金融委員会で質問に立ちました。日本銀行の黒田東彦総裁が都内における講演で、「家計の値上げ許容度も高まってきている」と述べました。物価高に苦しむ国民の実感からかけ離れた発言の撤回を求めようと思ったからです。


  ところが、私の直前に質問した同僚議員から「消費者と認識が違う」と厳しく指摘されると、黒田総裁は「全く適切ではなかった」として、いとも簡単に「発言は撤回する」と答弁しました。中央銀行総裁の発言撤回は異例です。「庶民の暮らしが分かっていない」と批判の声が高まり、事態の沈静化を図ったのでしょう。○


  私は、黒田氏の単なる個人的な失言だとは思っていませんでした。なぜなら総裁の講演原稿は、日銀幹部が事前にチェックしているはずだからです。ですから、「値上げ許容度は組織的な見解ではないか」と質しました。黒田氏は「別に(値上げを消費者が)歓迎するという意味ではなく、消費行動の分析として(許容度という)言葉を日銀内で使っていた」と説明しました。


  黒田総裁は東京大学の渡辺努教授の家計への調査を引用しました。「なじみの店でなじみの商品の値段が10%上がったときにどうするか」との問いに、「他店に移る」と回答した割合が昨年8月に比べ、今年4月は減少したことなどを踏まえ、「家計の値上げ許容度も高まってきている」と発言したのでした。


  しかし、私が調べたところ渡辺教授は「日本の値上げ『耐性』が多少高まった」と言及していますが、「許容」という言葉は使っていません。値上げがあってもいつものスーパーで買うのは、他店も同じで耐えて節約するしかないという気持ちと、許容は違います。このように言い換えていたことを質すと、総裁は「家計が値上げを歓迎するという意味ではなくて、苦渋の選択としてやむをえず受け入れているという意味だ。全く不適切だった」と釈明しました。


  黒田総裁は同じ講演の中で、「急激な変動ではなく安定的な円安方向の動きであれば、経済全体にプラスに作用する可能性が高い」とも語っています。円安の評価は立場によりプラス、マイナス両面あるはずです。総裁の一方的で偏った発言は円安容認と思われ、現に円安を助長しています。もはや「黒田円安」です。


  日本銀行が現状の景況感と先行きを年4回調査公表している「日銀短観」は、全国約1万社の企業経営者を対象としたアンケート調査です。資本金2000万円以上の21万社が母集団です。全国の法人は約280万社。ちなみに資本金1000万円以下は約230万社もあります。


  私はこの事実を突きつけ、日銀が限られた企業の実態しか把握しておらず、中小零細企業の現状が見えていないこと、円安に対する怨嗟の声が届いていないことを指摘しました。


  黒田総裁の答弁は、「中小零細企業の声、その経済動向も、完全ではないとしても相当に把握するよう努めております」にとどまりました。


  

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