かわら版 No.1318 『対ロシア外交の検証を』
2022/05/30ロシアのウクライナ侵攻から3か月。出口は見えず、戦争が長期化の様相を呈しています。アジアの安全保障環境も厳しくなってきていることもあり、勇ましい言葉がまかり通っています。しかし、なぜウクライナ危機が起こったのか、しっかり検証することこそ今やるべきことではないでしょうか。
私は、総理在任中の2012年にプーチン大統領と2回会談しました。最初はメキシコでの20か国・地域(G20)首脳会合の時。プーチン氏は遅刻の常習犯ですが、私も随分待たされました。そしてわびることもなく素知らぬ顔でやってきました。相手をじらし試しているようでした。
2回目はロシアのウラジオストク。アジア太平洋経済協力会議(APEC)があり、プーチン氏は「ご褒美として(会議運営の)学生ボランティア500人を日本に送りたい」と突然提案してきました。私が歓迎の意を伝えると、今度は「3日後に船を横浜へ出すのでビザを至急発給してほしい」との要求。何とか対応しましたが、無理難題を言ったり、相手をじらしたりして、相対するリーダーの力量を見計らうようでした。
2014年は日本の対ロ外交が試されました。14年2月、ロシアのソチで開催された冬季オリンピックの開会式では、欧米の主要国の首脳がロシアの人権侵害への抗議で欠席する中、出席した先進国の首脳は安倍元総理だけでした。今年2月に北京で開催された冬季五輪は、新疆ウイグル等における人権侵害に抗議するため政府代表団を派遣しない「外交ボイコット」をしましたが…。
そして、14年3月、ウクライナ南部のクリミア半島がロシアに併合されました。国際社会を試しながらの力による現状変更でした。ロシアの実効支配が確立した後に西側などは制裁を講じましたが、効果はありませんでした。特に日本の制裁はやったふりの感が強く「真空切り」と呼ばれる実効性のないものでした。
プーチン氏にしてみれば「こんなものか」と思わせる内容で、この時の成功体験が今回の本格的な侵略につながったと思います。ある意味、国際社会がプーチン氏を増長させました。クリミア併合後、国際的に対ロ支援が減る中、日本だけが8項目の対ロ経済協力を拡充してきました。安倍元総理とプーチン氏の直接会談も27回に上ります。そう考えると、日本が彼を最も増長させてきたのではないでしょうか。
日本外交はこうした経緯を猛省すべきです。プーチン大統領の下で長年ロシアの外相を務めてきたのはラブロフ氏。そして、岸田文雄総理は外務大臣時代、ラブロフ外相と対峙してきました。その岸田総理が現在「新時代リアリズム外交」を掲げています。リアリズムと言うからには、安倍・岸田対ロ外交を検証すべきです。
以上のような観点で、6月1日午後、衆院予算委員会集中審議で岸田総理に質問します。TV中継もありますので、是非ご覧ください。