かわら版 No.1317 『細田衆院議長のちゃぶ台返し』
2022/05/232012年11月14日の党首討論において、当時総理大臣であった私と安倍晋三自民党総裁との間で、消費税を引き上げる代わりに「身を切る改革」である議員定数削減を実現する約束を交わしました。衆人環視の中での政権党と野党第1党の党首間の合意は、国民との約束と言っても過言ではありません。
あれから10年、自公政権下で約束は誠実に履行されていません。衆院における定数削減は2014年改正で小選挙区が5議席減、2016年改正で小選挙区6、比例代表4の議席が減らされました。2012年の党首討論時の衆院定数480議席が現在は465議席になりました。牛の歩みのようですが衆院は定数を削減してきましたが、参院は逆に議席を6増しています。
ところが、「たくさんの議員を出して、盛んな議論をしてもらうのがいい。議員を多少増やしたって、バチは当たらない」と、衆院においてもトンデモ発言が飛び出しました。しかも、発言者はこともあろうに細田博之衆院議長です。
細田氏は自他共に認める選挙制度の専門家です。1票の格差を解消するために衆院小選挙区の区割りを「10増10減」することになっていますが、その根拠となった「アダムズ方式」(米国第6代大統領アダムズが考案したとされる人口比を正確に反映しやすい議席配分方式)を採用する法案をまとめた張本人です。
昨年11月末に公表された2020年国勢調査の確定値を基に改定作業が行われています。定数が増えるのは5都県。東京5、神奈川2、埼玉、千葉、愛知が各1増えます。定数減は宮城、福島、新潟、滋賀、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、長崎の10県で各1減です。
来月、衆院選挙区画画定審議会が具体的な線引きを行った上で勧告することになっていますので、今は大詰めの段階です。議席が減るのは安倍元総理の地元の山口、岸田総理の地元の広島、二階元幹事長の地元の和歌山など、自民党が強いと言われている選挙区ばかりです。だから、細田氏は今頃になって「地方を減らして都会を増やすだけが能じゃない」と言い始めました。そして、とうとう定数を増やす妄言まで飛び出しました。
露骨な党利党略です。しかも、言い出しっぺがちゃぶ台返しするとは…。国会で与野党が話し合って決めたことを、公平・中立であるべき議長自らがひっくり返そうとは言語道断です。さすがに自民党の伊吹文明元衆院議長も、「ポジションにいる者には言ってはいけないことがある。私も議長の時、言ってはいけないことは抑えていた」と、苦言を呈しています。
言ってはいけない発言を繰り返す人物は、議長の資質があるのでしょうか。私は、罰に当たると思います。