詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1316 『皇室と憲法』

2022/05/16

  皇室制度に関わる有識者会議報告書の検討が国会に委ねられています。しかし、細田衆院議長は指導力を発揮せず、全く議論が進んでいません。物議を醸す発言は続けていますが…。憲法とも密接に関わる重要なテーマですので、私は5月12日の衆院憲法審査会において次のように発言しました。


  「皇室典範特例法に対する附帯決議の主たる要請であった安定的な皇位継承を確保するための諸課題の検討は、報告書では『機が熟していない』として先送りされています。国会を軽視していると共に、次世代皇位継承者がたったお1人しかいないことに対する危機感が足りません。


  皇族数の確保を図る具体策は2つ提案されていますが、いずれも憲法と関連づけた深い洞察に欠けています。その欠落した憲法的視点を補うためにも憲法審査会における議論が必要であり、立法府の総意をまとめるための地ならしになると思います。2つの案の具体的な問題点を指摘したいと思います。


  まず、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案は、『配偶者と子は皇族という特別な身分を有せず、一般国民としての権利・義務を保持し続ける』としています。これがもし実現すれば、1つの家族の中に皇族と一般国民が同居するという不自然な形になってしまいます。憲法第1章(天皇)と第3章(国民の権利及び義務)を家庭内で両立できるのでしょうか。


  女性皇族は戸籍がなく投票権もありません。言論や表現の自由は制限され、政治的発言やSNSの発信もできません。しかし、その夫と子は言論や表現の自由、職業選択の自由などが認められ、SNSも活用していいし、政治的発言も自由です。夫は被選挙権もあるし、子はスカウトされてタレントになることも可能です。この不自然な家庭からはたくさんの不都合が次々と噴き出すことでしょう。


  次に、75年前に皇籍離脱した旧宮家子孫の国民男性を養子縁組して皇族に復帰させるもう1つの案も、幾多の問題点がありますが最大の問題は憲法違反の指摘があることです。


  国民の中にあまた存在する「皇統に属する男系の男子」の中から、旧宮家の子孫だけを養子縁組によって特権的に皇族の身分を与える案は、憲法第14条が禁じた『門地による差別』に該当するという指摘です。違憲の疑いのある制度では到底国民の理解を得ることはできません。


  以上のように憲法を踏まえた深い洞察に欠ける報告書でありますので、立法府の総意をとりまとめるにあたり、憲法審査会における丁寧な議論を積み重ねることが重要だと思います。」


  皇位の安定的な継承や皇族数の確保は、国家千年の計といえるでしょう。憲法との整合性という観点から憲法審査会で大いに議論しようと、今後も積極的に提起していく決意です。


  

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