詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1314 『インフレ下で役に立たない日銀』

2022/04/25

  マーケット(市場)はもうかるかもうからないで市場に参加する参加者で構成されてこそ、効率的に資源配分されます。しかし、国債市場においては日本銀行が巨大なモンスターのような存在になってしまい、市場機能が損なわれています。


  本来、長期金利は「経済の体温計」と言われ、景気過熱や財政悪化に警鐘をならす機能がありました。が、日銀が長期国債などを大量に買い入れることにより、体温計は完全に壊れてしまいました。ちなみに、中央銀行が長期金利を直接誘導している国は日本だけです。


  日本銀行は長期金利の変動幅の上限を0.25%としています。金利がその上限に近づいた2月10日、日銀は指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を発動すると発表しました。結局、予告の効果で発動することなく上限を死守しましたが…。


  直後の2月15日の衆院財務金融委員会において、私は黒田日銀総裁に対して指し値オペの有効性及び妥当性を質しました。この時黒田総裁は指し値オペは「ラストリゾート」(最後の手段)だとの認識を示し、「しばしばやるつもりはないが、必要に応じてやる」と答えました。


  ところが、3月末に再び長期金利が0.25%の上限に接近すると、日銀は3日連続の指し値オペに加え、2兆3千億円もの臨時の国債買入れオペまでも実施しました。なりふり構わず金利を抑えようと躍起でした。


  ラストリゾートと呼ぶほどですから、私は眠狂四郎の円月殺法を思い浮かべていました。構えた瞬間でもう勝負ありなんだろうと。ところが、連続オペや臨時オペやと伝家の宝刀をぶるんぶるん振り回す大立ち回り。日銀のヒステリックな姿勢が晒されました。


  私は黒田総裁の「円安は日本経済にプラス」という円安容認発言は、円安を助長したと思います。加えて、米国等がインフレ退治のために利上げしている折に、必死に金利抑制に努めている日銀の姿は、円安を加速していると思います。金利の高い通貨を買い、金利の低い通貨を売るのは世の常識ですから。


  ところが、日銀は長期金利の上昇を抑えるため、連続指し値オペを4月21日~26日の6営業日にわたり実施することになりました。米国のFRB(米連邦準備制度理事会)は来月0.5%の利上げをするでしょうから、ますます金利差は拡大します。


  日銀がインフレ局面でも利上げできない理由の1つは、日銀本体の財務内容が悪化するからです。日銀は500兆円を超える長期国債を保有していますが、私が総裁にその平均利回りを尋ねたところ、「令和3年度上半期において0.226%」と答弁しました。


  この平均利回りを日銀当座預金への利回りが超えれば、「逆ザヤ」が生じ評価損が発生します。債務超過になる可能性もあります。そうなればインフレどころではなく、ハイパーインフレです。岸田政権は4月末までに物価高対策をまとめることになっていますが、日銀の金融政策が足を引っ張ることになるでしょう。


  

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