詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No1300 『戦略的経済外交』

2022/01/17

  本年元日、地域的な包括的経済連携(RCEP=アールセップ)が発効しました。日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド及び東南アジア諸国連合(ASEAN=アセアン)10か国の計15の署名国のうち、10か国が批准したことによります。


  RCEPは私が総理だった2012年11月、ASEAN関連首脳会合で交渉を開始しました。東アジアの貿易自由化を主な目的とした経済連携協定です。加盟国が互いに関税を引き下げることにより最も恩恵が大きいのは日本であり、域内への日本の輸出が2019年比で5.5%増えると試算されています。


  環太平洋パートナシップ協定(TPP)交渉参加に向けて、関係国との協議に入ったのも私が総理の時でした。2011年11月、ホノルルで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議で宣言しました。その前日に開かれたオバマ大統領との日米首脳会談において、次のようなやり取りがありました。


  私は、TPPをビートルズに例えて説明しました。「日本はポール・マッカートニーです。ポールのいないビートルズはあり得ません。米国はジョン・レノンです。この2人がきちっとハーモニーしなければいけません」と。オバマ大統領は「わかりやすい話だね」と、満面の笑みを浮かべました。そして、「僕はポールが大好きさ」と、私の交渉参加への決意を理解してくれました。


  ところが、トランプ政権下の2017年に米国はTPPから離脱。日本など残る11か国で2018年からTPP11が発効しました。米国抜きの協定は、ジョン・レノンの入らないビートルズみたいなものです。


  そのTPPが、昨年はにわかに注目されるようになりました。英国、中国、台湾、韓国が次々と加盟申請したからです。奇しくも日本がTPPの議長国の年でしたが、どのように戦略的に指導力を発揮したのか、残念ながら全く見えませんでした。


  TPPはRCEPよりも、関税撤廃や投資ルールが高い水準にあります。その高水準を満たすかどうかを加盟可否の唯一の基準として、申請国が厳しい条件を満たせるかどうかを見極めることが重要です。


  貿易慣行、国営企業に対する優遇措置、知的財産権の処理など、中国にとっては高いハードルになるはずです。これらの難題を抜本改革する覚悟があるならば、歓迎すべきでしょう。既加盟国は中国の変革を促すべく安易に妥協すべきではありません。


  その交渉プロセスの間、同時並行で米国のTPP復帰に向けた働きかけを強めるべきでしょう。日米が主導する経済圏に中国が入ってくることが望ましいと思います。しかし、岸田政権がスタートして百日を超えましたが、バイデン大統領との日米首脳会談ですらまだ実現できていません。外務大臣を長く務めたにもかかわらず…。


  

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