かわら版 No.1197 『教育の機会均等』
2019/11/11親との死別・離別を経験したり、児童養護施設に暮らすなど、社会経済的に困難な状況にある高校生・大学生を対象に、返済不要の奨学金の支給及び人材養成の運営を行っている一般財団法人があります。その法人の要請を受け、先月29日、同法人のプログラムに参加している若者たちと対談させていただきました。
Aさんは早大1年生。彼女は幼少期に母を自殺で亡くし、その後、養父からの虐待に耐える日々が続きました。学校に行かせてもらえず、食事も与えられず、夜、雪の中を引きずられたり、包丁を投げつけられたり、風呂で溺れさせられそうになったり…。
通報によりAさんは保護され、児童養護施設に入所。そこで様々な事情により入所した子どもたちと共同生活することに。彼女は児童養護施設の課題や、当事者として感じていること、そこで芽生えた自分の夢などを、先述した法人にメールで送りました。このメールがきっかけとなり、それまで東日本大震災の遺児等を支援していた同法人が、児童養護施設の子どもたちを対象とした奨学金プログラムを始めました。いま彼女は、弱者の立場を伝えるジャーナリストをめざしています。
B君は一橋大1年生。彼が中学生の時、父の事業が傾き、東南アジアに一緒に逃げる羽目に。学校に通うことのできない食うや食わずの環境で2年間過ごしました。しかし、進学したいという一心で家を抜け出し、単身、日本に帰国。児童養護施設の下に夜間中学に通い、都立高校を経て国立大学に合格しました。彼は今、児童養護施設に入所している子どもたちのための学習塾をつくろうとしています。
逆境にありながらも藁をもつかむ気持で学ぶチャンスをつかみ取り、人を支える立場になろうという清々しい若者の志に触れ、1人の政治家として身の引き締まる思いがしました。これまで高校授業料の無償化を実現し、給付型奨学金の拡充などにも努めてまいりましたが、今後も「教育の機会均等」の実現にむけて不断の努力を続ける決意です。
教育基本法に定められた国是ともいうべき教育の機会均等という理念を、萩生田文科大臣は全く理解していないようです。言葉尻を捉えた批判は好きではありませんが、彼の英語民間試験を巡る発言は看過できません。
まずは、「初年度はいわば精度向上期間」という発言。来年度の受験生はモルモットではありません。周到な準備をしてスタートすべきです。そして、「身の丈」発言。教育の機会均等を実現すべき文部行政のトップが、経済格差や地域格差を容認したのでは大臣失格です。さすがに民間試験は延期されることになりましたが、当然だと思います。
国語と数学の記述式入試問題についても再考すべきです。難解な記述式の採点を教員や専門家でないアルバイトが採点することもわかりました。民間任せが過ぎます。受験生が採点の公正性に不安を抱くのではないでしょうか。