かわら版 No.1192 『危機管理能力』
2019/10/018月25日に執行された埼玉県知事選は、野党勢力が支援した前参院議員の大野元裕氏が当選しました。いい候補者を擁立し各党が一丸となって戦えば、1強を倒すことができることを証明した選挙でした。9月25日、その大野新知事の勝利を祝うとともに、10月27日投開票の参院埼玉選挙区補選に立候補する上田清司前知事を激励する小宴に参加しました。
自ずと猛威をふるった台風15号への対応も話題になりました。4期16年にわたり知事を務めた上田氏は、台風が近づくと予定していた会食などは早めに退席し、いざという時の陣頭指揮に備え緊張感をもって待機していたと、述懐されていました。
被害が大きく広がりつつある時に内閣改造を行い、防災服ではなく燕尾服を着ていた人たちとは心構えが違います。東京電力には不眠不休を要求しながら、初動で遅れた上、果敢にリーダーシップをふるった形跡もない千葉県知事には爪の垢を煎じて飲んでほしいものです。
大野新知事も就任早々から、台風15号や豚コレラなどの対策に追われています。まるで彼の資質や能力を試すかのようです。でも、見事に県政のトップとして采配を振るっています。さすがです。
大野氏は元々外務省の調査員・書記官として活躍した中東問題の専門家です。首都大学東京で危機管理の講師を務めたこともあります。2010年の参院選で初当選しますが、その2年後には野田内閣の防衛大臣政務官に就任します。この抜擢はズバリ的中します。
2012年12月21日、私は安全保障会議を開き、PKO協力法に基づきシリアとイスラエルの国境にあるゴラン高原に派遣していた自衛隊の撤収を決めました。私が総理の座を降りる1週間前の政治判断でした。約17年も続いてきた自衛隊PKOを総選挙で敗れた死に体内閣が終止符を打っていいものか、率直に言って迷いもありました。
最も大きな判断材料となったのは、大野政務官の冷静な分析に基づく進言でした。シリア内戦の激化で治安が悪化し、隊員の安全確保ができない可能性が高まっていたのです。翌年、国連のPKO要員が拘束されたり、人質となったりする事案が続発しましたので、わが国の自衛隊員の血が流れるかもしれないという危機を回避するための間一髪の決断となりました。
大野新知事は上田県政を引き継ぐだけではなく、危機管理のプロとしての手腕も注目されるようになるでしょう。自然災害、感染症、テロなど、どのような不測の事態が発生するかわかりません。「想定外」という言い訳はもはや通用しません。国のみならず、自治体のリーダーにも危機管理能力が厳しく問われる時代になりました。有権者も確かな人を確かな目で選ばなければなりません。