かわら版 No.1175 『平成の宿題』
2019/05/07令和という新しい時代を迎えましたが、3つの視点から平成を振り返りたいと思います。平成の31年間は、今上陛下が即位されてから退位するまでの御代ですから、まずは天皇と国民との関わりから始めます。
天皇、皇后両陛下が即位後、最初に災害に遭った地域を訪問されたのは、平成3年に雲仙普賢岳の火砕流で大きな被害が発生した時でした。両陛下が被災地に行った時の映像が報じられた時、天皇たるもの膝を折って話を聞くような事はすべきではないと、批判が轟々と押し寄せたそうです。
その後も阪神淡路大震災、中越地震、そして東日本大震災など大きな自然災害が続発しましたが、そのたびに両陛下は被災地に何度も足を運ばれました。国民に寄り添い、国民の声を全身全霊で受けとめる姿勢は、被災者の絆、国民の絆を強めました。
天皇は憲法で「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と定められていますが、両陛下が確信をもって体現され続けたことにより、平成という時代は象徴天皇制が国民の間に定着した時代になったといえましょう。
次に、平成を税財政という視点から振り返るならば、昨年、財政制度等審議会がまとめた建議にある通り、「常に受益拡大と負担軽減・先送りを求めるフリーライダーの歪んだ圧力に抗しきれなかった時代」と、厳しく総括せざるをえません。
平成2年は、歳出が約70兆円、歳入が約60兆円と、その差が最も近づいた年でした。一時低迷していた税収は今日約60兆円まで戻したものの、今年度予算における歳出は、史上初めて百兆円の大台まで膨らんでしまいました。歳出と歳入のギャップは「ワニの口」のように、どんどんと広がってきています。
平成元年に、税率3%で消費税が導入されましたが、現時点では8%。約30年間で5%引き上げるのに精一杯でした。消費税を引き上げようとすると激しい反対に遭い、政権が飛んでしまいかねないというトラウマを、いまだに断ち切れていません。
最後に、政治改革の視点から平成を振り返ります。平成6年に「政治改革関連法」が成立し、小選挙区比例代表並立制が導入されました。この政権交代可能な2大政党制をもたらす制度により、平成21年、悲願の政権交代を果たし、民主党政権が誕生しました。
しかし、安倍政権に政権を明け渡して以来、野党は選挙で負け続けています。これまでは政権が失敗すれば、振り子が振れて野党に風が吹き、政権交代できるチャンスがありました。しかし、長期政権の弊害が明らかになっているにもかかわらず、野党がバラバラなため受け皿になりきれていません。
平成では成し遂げられなかった宿題が残りました。皇位の安定的継承や財政健全化への道筋、そして一強多弱の克服です。令和の早い段階で、目途をつける決意です。