かわら版 No.1173 『「国民感情」と「そろばん勘定」』
2019/04/08私が衆院に初当選したのは、平成5年です。その翌年、小選挙区比例代表並立制や、政党への公的助成の導入、政治資金規正の強化を柱とする「政治改革関連法」が成立しました。様々な曲折を経て、当時の細川総理と河野自民党総裁が、お互いの万年筆を交換して合意文書にサインした時は、当時1年生議員だった私は、鳥肌の立つような感動を覚えました。
平成19年、全ての支出について領収書等を徴収、1万円以下の少額領収書等の公開等を柱とする政治資金規正法の改正の際には、中堅議員として深く関わりました。この頃、政治とカネをめぐるスキャンダルが続発し、不明朗な政治資金の実態が明らかになりました。このため、与野党でワーキングチームをつくり、政治資金を透明化するための制度設計の協議が行われたのでした。
当時、私は民主党の政治改革推進本部事務局長を務めておりましたので、党を代表してこの政策協議に参加しました。自民党は武部勤元幹事長、石田真敏現総務大臣がカウンターパートでした。公明、共産、社民、国民新党の実務者も加わり、成案を得ることができました。
これらの経験から、私は、選挙制度や政治資金、議員の身分に関わることについては、真摯かつ丁寧な政党間協議を通じて、合意形成を図ることが鉄則だと固く信じてきました。ところが、昨夏、自民党の党利党略により、参院の議員定数が242から248へと、6議席増やす法律が成立してしまいました。政治改革の歴史に大きな汚点を残すことになるでしょう。
新たに増える議員の1人当たりの1年間に必要な経費は、人件費(議員歳費と議員秘書手当)と義務的経費(文書通信交通滞在費や立法事務費など)を合わせて7,530万円余となります。6名分の1年間に必要な経費は、合わせて4億5,100万円余となります。また、これを参議院議員の任期6年分に換算しますと、総額27億1千万円余となります。
国民にご負担をお願いする消費税の引き上げの前に、議員定数を減らし身を切る覚悟を示すのが筋でしょう。10月1日の消費税引き上げの直前、7月の参院選から定数を6つも増やすなど、「国民感情」を逆なでする暴挙だと思います。
さすがに、自民・公明もやましい気持ちがあるらしく、定数増を踏まえ議員歳費を月額7万7千円削減する法案を国会に提出しました。しかし、この法案は「そろばん勘定」が合っていません。現在、参院議員会館において、3名分の議員事務室をつくるため改修が行われています。1億8,700万円も整備にかかるそうです。6名分の部屋を造ると約4億円です。歳費削減法では事務所新設費用までは賄えないのです。
参院定数6増は、国民感情、そろばん勘定の両方間違っています。このことを、いま衆院の「政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会」で厳しく指摘しているところです。