かわら版 No.1137 『筋悪の定数増法案』
2018/06/251月22日に召集された会期150日間の通常国会は、6月20日が会期末でした。しかし、政府・与党はまだ積み残した法案があるとして、7月22日まで32日間、会期を延期することを決めました。
この会期延長により、安倍政権が今国会の最重要法案と位置づける「働き方改革関連法案」が成立する見通しとなりました。同法案は8本の法改正を一括して行う「束ね法案」であり、働く人を保護する残業時間の規制強化と長時間労働を助長する高度プロフェッショナル制度(高プロ)などが混在しています。方向性が真逆なものまで包含しているため、筋が通らない法案です。
筋が悪いカジノを含む「統合型リゾート(IR)実施法案」も、その成立が濃厚になってしまいました。わが国の1~3月期GDPは、9四半期(2年3か月)ぶりにマイナスになりましたが、アベノミクスの不振を挽回するために人々の不幸や不運を前提とする不健全な経済政策に踏み切っていいのでしょうか。カジノ法案の審議過程で、事業者が利用者にお金を貸すことができることも明らかになりました。ギャンブル依存症の人たちをカモにするつもりなのでしょうか。
そして、政府・与党の会期延長による真の狙いは、参議院の選挙制度改革に関する「公職選挙法改正案」の成立です。これこそ筋悪の極めつけ法案といえるでしょう。
来夏の参院選に向けて、1票の格差是正を与野党で協議するため、これまで計17回にわたり専門委員会が開催されてきました。現行制度は「鳥取・島根」「徳島・高知」の組み合わせで選挙区が統合されていますが、この「合区」を憲法改正によって解消する案を、自民党はこの間一貫して主張してきました。しかし、改憲による合区解消案は、与党の公明党も含め他党の賛同は得られませんでした。
すると、突然与野党協議が打ち切られ、国会最終盤に唐突に自民党案なる法案が提出されました。本来、民主主義の根幹に関わる選挙制度改革は、主要政党間の合意形成を丁寧に図るべきです。これまではそうした努力が行われてきました。しかし、今回は自分勝手に土俵を変えようとしています。
現行の選挙区定数は146。比例代表の定数は96です。自民党案は議員1人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区の定数を2増やします。比例代表については政党が当選順位をつけずに名簿を届け出る「非拘束名簿式」で行われていますが、予め政党が決めた順位で当選者が決まる「拘束名簿式」を一部導入し、しかも定数を4増やします。
その心は、「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区では2県に1人しか候補者を出せませんが、立候補できない県の候補を名簿上位に登載し当選させ、救済することにあります。露骨な党利党略です。その結果、総定数は242から248へ「6増」します。人口減少時代に定数増など言語道断です。
かつて、私は安倍氏との党首討論で、「身を切る覚悟」の定数削減を迫りました。同じことを参院改革でも迫りたいと思います。