かわら版 No.1103 『奢れる者久しからず』
2017/09/292012年に第2次安倍政権が発足してから5年目になります。一旦は流行語にもなった「アベノミクス」に、国民は大いに期待しました。しかし、異次元の金融緩和による2%の物価上昇はいまだ果たせず、これを援護射撃するはずだった黒田バズーカは不発でした。
日本銀行による積極的な国債買い入れを、いつまでもその出口を見出せないまま節操なく長引かせることは、明らかに財政規律をゆるませます。積み上がった膨大な利払い費を軽減させ、さらに借金をしやすくするための道具になっています。
いまやこの日本の国債市場で、活発な取引をしているのは日銀だけです。このまま市場機能が墜ちていくばかりで、この国の財政は本当に大丈夫でしょうか。
私は総理大臣在任中、社会保障と税の一体改革、尖閣諸島国有化等、歴代政権が先送りしてきた課題に真正面から取り組みました。先の通常国会では、天皇陛下の生前退位を認める特例法の制定にあたり、与野党合意のため先頭に立って力を尽くしました。次は、財政・金融の破綻という目の前に立ちはだかっているとてつもない脅威から、なんとしてもこの国を守るために働きたいと決意しています。
幻想をふりまいたアベノミクスの化けの皮は剥がされてきました。そして共謀罪などの悪法を次々と強行に採決したり、「森友・加計学園問題」では説明責任を放棄したりなどのやりたい放題。傲慢と独善の安倍政権の本質を、国民はもはや見抜いたのではないでしょうか。
極めつけは、9月28日の冒頭解散です。憲政史上稀に見る破廉恥な解散だと思います。総理は記者会見で、深刻化する少子高齢化に対応するため消費税の増収分を教育無償化などにあてると表明し、消費税増税分の使途変更について国民の信を問うと説明しました。
とってつけた話です。年金・医療・介護に加えて子育て支援にも消費税を充当し、「全世代対応型社会保障」を実現する道筋をつくったのは私です。高校無償化を導入したのも私たちです。その時、バラマキと猛批判したのは自民党・公明党です。
北朝鮮情勢の緊迫化も解散の理由に挙げていますが、強烈な違和感をおぼえます。国民の生命と財産を守ることについては与野党の差はなく、争点化するよりも一致結束して対応すべきです。米朝首脳が激しい非難の応酬をしている時に政治空白を生じさせることは、「国難突破」ではなく未曽有の国難を招きかねません。
安倍総理の本音は、森友・加計疑惑をチャラにするには、野党の準備が整っていない今こそ勝機と判断したのでしょう。「奢れる者久しからず」の故事を思い知らさなければなりません。安倍一強政治を打倒する好機ととらえ、野党や市民が大同団結して立ち向かわなければなりません。私もその一員として戦う決意です。