かわら版 No.1087 『特区』
2017/06/05安倍総理の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の愛媛県今治市での獣医学部新設について、総理や菅官房長官は旧民主党政権下で「速やかに検討」と前向きに格上げされたと述べ、その検討結果を引き継いだと説明しています。矛先を私たち民進党に向けるつもりなのでしょう。
議論のすり替えです。旧民主党政権当時は地域からアイデアを出して国に提案するボトムアップを前提とする構造改革特区の議論でした。国の主導で規制緩和のメニューや地域、事業者を決める安倍内閣のトップダウン型の国家戦略特区とは制度の構造が異なるのです。前者は総理の意向が入る余地はありません。後者は長年の友人を特別扱いすることが可能です。こうした前提を全く説明せずに問題をすり替える手法は、国民に誤解を与えます。
加計学園をめぐる疑惑に関連して、次々と新たな事実が明らかになってきました。総理の意向を前川前文科次官に伝えたのは、総理補佐官だったこと、総理が数年間にわたり同学園の役員を務め、その間報酬を受けていたことなどです。国家戦略特区の悪用、権力の私物化の疑いはますます深まってきました。
国家戦略特区制度において特区の認定等について中心的な役割を果たすのが、総理を議長とする諮問会議です。この会議を巡っては、民間議員等が私的な利益の実現を図って議論を誘導し、または利益相反行為に当たる発言を行っているのではないかとの疑惑が、かねてより指摘されていました。
昨年7月、神奈川県の特区で規制緩和された家事支援外国人受入事業は、大手人材派遣会社が事業者に認定されました。諮問会議の民間議員の中には同社グループの会長がいました。審査する側が仕事を受注したわけですから、とても公正・中立とはいえません。
農業分野で特区に指定された兵庫県養父市では、その人物が社外取締役を務める企業の子会社が参入しました。
地域を限定して規制の特例を認める特区の枠組みを否定するつもりはありません。ただし、公正・公平な行政手続を踏んでいることが大前提です。しかし、現実は、水面下で権力に有利に、特定の事業者や友達に有利に方向づけているのではないでしょうか。特殊法人、特別会計、そして特区…。「特」(スペシャル)が冠につく制度は、利権の温床になりやすいのかもしれません。
前川前事務次官の「行政が歪められた」という発言の背景には、このような問題意識があるのかもしれません。1日も早く証人喚問を実現し、真実を語ってほしいと思います。