詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 №1081 『シリア空爆の狙い』

2017/04/17

  4月7日、米国はシリアに対する武力攻撃に踏み切りました。アサド政権の化学兵器使用による子供たちや婦人の被害を強調し、その報復措置だと主張しています。


  東地中海に展開する米海軍艦艇2隻から、化学兵器攻撃を行ったとされるシリアの航空機基地に対して、59発のトマホーク巡航ミサイルを撃ち込みました。


  今回の空爆の最大の狙いは、トランプ大統領がオバマ前大統領と自らを対比させ、決断力・行動力のあるリーダーであることをアピールすることだったのではないでしょうか。


  2011年以来シリアでは内戦が続いていますが、2013年、当時のオバマ大統領は化学兵器使用を「一線を越えた」と判断し、対シリア攻撃を計画しました。にもかかわらず、ロシアの仲介などもあり、米国による武力行使は行われませんでした。


  トランプ大統領は、今回の化学兵器使用を「不埒な」と非難する一方、アサド政権のこの「凶悪な」行動はオバマ政権の「弱さと優柔不断」が招いたものだと批判する声明を発表しました。そして、アサド政権が「多くの一線を越えた」と、かつてのオバマ大統領の発言を想起させるような主張を行い、自らの政権が必要な行動を決断できることを内外に示したかったのでしょう。


  日本政府は、空爆を支持するのではなく、化学兵器使用は許さないという「決意」を支持するという巧妙な言辞を用いています。しかし、アサド政権が化学兵器を使用したという根拠、武力行使の国際法上の正当性をいかに整理するかなど、冷静に議論すべきテーマが幾つもあるので、是非国会で「集中審議」を行うべきです。


  今回の攻撃が、トランプ大統領と中国の習近平主席との首脳会談の真っ只中に行われたことも注目しなければなりません。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し強い圧力を加えることを中国側に求める一方、「一線を越えた」ら米国の単独行動もあり得るというメッセージだったのではないでしょうか。


  習主席に対しては大きな揺さぶりとなり、北朝鮮指導部にとっては心胆を寒くさせるような対応だったでしょう。しかし、それが将来における中国の北朝鮮に対する根本的な姿勢の変化や、北朝鮮による行動パターンの変更をもたらすかどうかはわかりません。


  韓国の大統領が不在であることもあり、朝鮮半島情勢は大きな地政学的リスクになってきています。在留3万人以上ほか、観光客も含めた10万人規模の在留邦人の保護・退避など、最悪の場合のシナリオも真剣に検討すべき時だと思います。

活動報告一覧へ戻る
HOMEへ戻るpagetop