かわら版 No.1047 『危機管理を問う』
2016/07/2218日午前10時頃から約2時間、中国の公船3隻が尖閣諸島・魚釣島沖のわが国の領海に侵入しました。この時、安倍総理は山梨県の河口湖近くのゴルフ場で、経団連幹部とプレー中でした。
翌19日早朝、北朝鮮軍が日本海に向けて、弾道ミサイル3発を発射しました。この事態を受け安倍総理は、不測の事態に備えて万全の態勢を取るよう関係省庁に指示をしました。しかし、その指示は山梨県鳴沢村の別荘から出しています。総理自らは万全の態勢を整えていませんでした。
17日夜から24日まで、総理が約1週間の夏休みに入っていたからです。休みをとるなと酷なことを言うつもりはありません。海外出張や全国遊説など高速移動が続くと、疲労が蓄積します。ストレスもたまります。経験者しかわからないことですが…。
しかし、せめて総理公邸で休養をとるべきでした。中国は南シナ海仲裁裁判所の判決を「紙くず」と酷評するなど強く反発しており、東シナ海も含めて海洋権益を巡っては挑戦的な行動に出る可能性があります。北朝鮮は、米韓両国による在韓米軍に最新鋭ミサイル防衛システム(THAAD)を配備することの決定に対し、これをけん制しようとしています。こうした北東アジアの情勢を冷静に分析するならば、別荘で夏休みなどという選択はあり得ないはずです。
先の参院選中は、総理官邸に安倍総理も菅官房長官も不在の時に危機管理が問われる事態が相次ぎました。
6月15日、中国軍艦が領海に侵入しました。中国軍艦の領海侵入は平成16年の小泉政権の時以来、史上2回めの重大な事態です。この日、総理は東北遊説、官房長官は宮崎を訪問中でした。
6月24日、イギリスのEU離脱が決まり、金融市場に激震がはしりました。急激に円高株安が進む中、総理は東北、官房長官は北海道で遊説中でした。マーケットが閉まった夕刻に官邸に戻った総理が関係閣僚会議を開きましたが、官房長官、外務大臣、経産大臣といった主要閣僚が欠席しました。
7月2日、バングラデシュの首都ダッカでの襲撃事件で日本人7人が死亡しました。事件発生が未明であったため、総理は予定していた北海道訪問をやめましたが、官房長官は邦人の安否が不明の段階で官邸を離れ、新潟での選挙応援に向かいました。この日も官邸同時不在の日程が組まれていたのでした。
国政選の期間中、党首である総理が全国遊説する間、官房長官は東京で留守を守るということは、歴代政権が守ってきた鉄則でした。現政権は、平然と掟破りをしています。
いつでもどこでも自然災害やテロが起こりうる時代なのに、最終的な責任を負うべきリーダーと司令塔の危機管理対応には大きな問題があります。やはり、慢心と驕りの表われではないでしょうか。