22日から参院選が始まります。安倍総理は「アベノミクスを加速させるか、後退させるか」を問うと言っていますが、賞味期限の切れたアベノミクスがまた争点になるのでしょうか。

　　安倍政権が誕生して約３年半。この間を平均した実質国内総生産（ＧＤＰ）の成長率は、わずか0.7％です。民主党中心の政権下３年３か月の1.7％よりも低い数字でした。

　　アベノミクスが低速のポンコツ車であることは、もはや実証されています。そのボロ車のギアを入れ替えてエンジンをふかそうと息巻いていますが、車は加速するはずがありません。むしろ、エンジンの空ぶかしによる排気により、害毒が撒き散らかせられます。

　　その第１は、財政規律の弛みです。日本銀行が大量の国債を引き受け財政をファイナンスしているため、政府の財政運営は野放図になりがちです。65歳以上の方に３万円給付するという選挙前のバラマキなど、例を挙げたらきりがありません。

　　第２の害毒は、格差拡大です。大企業が収益をあげ豊かな人が大金持ちになれば、いずれは皆にも恩恵が及ぶという「トリクルダウン」の発想は、根本的に間違っています。都市と地方、大企業と中小企業、正規雇用と非正規雇用など、あらゆる分野で格差が広がりつつあります。

　　2014年暮れの解散・総選挙も、アベノミクスが争点とされました。しかし、その後の国会で安倍政権が最も力を注いだのは、安保関連法の成立でした。争点化したテーマと真の狙いが明らかにずれていました。

　　今回の参院選も、アベノミクスを争点化し期待を煽りながら、実は改憲に必要な３分の２議席を虎視眈々と狙っているのでしょう。憲法改正をめざすならば、どの条文をどのように変えるのかを堂々と訴えるのが王道です。その意味では、安倍流の政治手法は、明らかに覇道です。

　　似たようなことが大相撲でも起こっています。大横綱・白鵬の最近の荒っぽい立ち合いです。まず、左手でフェイント気味に張り手です。相手力士はこれで眩惑され、たじろぎます。次は、間髪入れずに右からの強烈なかち上げ。かち上げと言われていますが、白鵬の場合は顔面への肘打ちです。この顔面へのエルボーで、勢関は失神し、大関・豪栄道は眼窩骨折しました。顔面は鍛えられません。大関が顔を骨折するような相撲は、明らかに覇道です。

　　左から相手を惑わす張り手はアベノミクス、右からのかち上げは憲法改正。そっくりじゃありませんか。

　　覇道の政治を倒すため、民進党は「自由」「共生」「未来への責任」の理念を高く掲げ、正攻法の王道で挑みます。