詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1015 『長寿企業に学ぶ』

2015/11/09

  池井戸潤の直木賞受賞作「下町ロケット」がテレビドラマ化され、毎週日曜夜に放送されています。主人公は佃製作所という中小企業の社長。メインバンクに見放されたり、巨大企業と特許を巡り訴訟になったりとピンチの連続です。それでも、ものづくりに賭ける夢と希望を失わず、挑戦し続ける姿を感動的に描いています。


  時代の流れに乗れずに倒産する中小企業も少なくありませんが、佃製作所のように幾多の困難を乗りこえて事業を継続している中小企業もたくさん存在しています。そして、働く人の約7割は中小企業に勤めているのです。


  創業100年を超える企業は、世界で約4万社だそうです。帝国データバンクの「長寿企業の実態調査(2014年)」によりますと、わが国の創業100年以上の企業は全国で2万7335社でした。世界の100年企業の約7割が日本企業ということです。そのほとんどが中小企業です。


  創業100年超の企業が2社しかない韓国が、日本企業の長寿要因に注目しました。そして、韓国銀行が2008年に発表した報告書によりますと、世界で創業200年以上の企業は5586社でした。このうち半分以上の3146社が日本企業でした。続いてドイツ837社、オランダ222社、フランス196社の順となっています。ちなみに世界最古の企業は、創業が西暦578年の㈱金剛組(大阪府)という寺社建築企業です。


  わが国は、関東大震災など幾たびも大きな自然災害に遭っています。先の大戦では甚大な戦禍を被りました。大恐慌や石油ショックなどグローバル経済の荒波も経験しました。これらの激動に柔軟に対応し、100年も200年も事業を継続してきた長寿企業に学ぶことは多いはずです。長寿企業には、顧客や従業員を守るための家訓や商道徳があります。こうした企業文化はもっと学び直されるべきです。


  江戸時代の後期、元禄バブルがはじけて人口減と経済の衰退の時代に入りました。この頃、「三方よし」(売り手良し、買い手良し、世間良し)で知られる近江商人が活躍し始めました。短期的に自分たちだけが良ければよいという戦略をとらず、長期的視点に立ち、低成長であっても売り手と買い手が満足し、社会や人々の生活に貢献し共存していく道を選んだのです。


  今日の日本も、人口減と低成長の時代に突入しました。どんな奇策を使っても、2020年までに国内総生産(GDP)600兆円を実現することはできません。そんな荒唐無稽なスローガンに騙されることなく、先人たちの知恵にヒントを見つけるべきでしょう。

 

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