かわら版 No.997 『南シナ海波高し』
2015/06/22海洋法上、島とは満潮時にも海面上に陸地が出ているものと定義されています。満潮時に海面の下にある岩礁を埋め立てて、島であると主張してもそんなことは認められません。そんな人工島をベースに領海や排他的経済水域を主張することも認められません。
平成16年12月に訪中した折、この海洋法をめぐる解釈について、当時の対日政策のキーマンである国務委員(副首相級)と激論になりました。この年、沖ノ鳥島周辺における事前通告なしの調査船の活動など、わが国の国民感情を害する事件が多発しました。そこで、私は「お互いにナショナリズムを煽り立てることは不幸なことであり、貴国はもっと行動を慎むべきではないか」と、指摘しました。
すると、彼は「太平洋上にある島を根拠に排他的経済水域を設定しているようだが、あれは岩礁に過ぎない」と、切り返してきました。
この発言に対して、私は「沖ノ鳥島は満潮時でも水没しないが故に、岩礁ではなく明らかに島である。かつて、満潮時には水没してしまう岩礁に高床式の掘っ立て小屋を立てて、南沙諸島を実効支配した貴国にとやかく言われる筋合いはない」と、反論しました。
このやり取りを鮮烈に覚えていた私は平成21年秋に財務副大臣に就任すると、最初に手がけた補正予算の中に沖ノ鳥島と南鳥島の整備費約7億円を計上しました。岩などといわれのない批判を受けないための「小さくてもキラリと光る予算」だったと自負しています。
一方、緊張が高まっている南シナ海において、中国が着々と進めている埋め立てによる人工島づくりは、明らかに国際規範への挑戦です。今回の場合は、高床式の掘っ立て小屋の比ではなく、滑走路を有する軍事施設として利用することも可能になります。これ以上既成事実が勝手に作られていくことを看過してはなりません。
フィリピン、ベトナム等の近隣諸国のみならず、南シナ海は重要な通商ルートでもありますので、懸念を有する関係国との強い連帯が必要です。中国は人工島の12カイリ内を領海と主張するでしょうが、長年にわたり国際法に則り航行の自由を貫いてきた米国との連携は不可欠になります。