格差拡大や中間層解体の懸念が強まっています。こういう時こそ、医療、年金、介護、子育て支援等の社会保障の充実・安定化を図らなければなりません。なぜならば、社会保障とは人が失業したり、病気やケガで倒れたり、年老いたりなど、困ったり弱ったりした時のセーフティネット(安全網)だからです。そして、社会保障には再分配機能がありますので、格差を是正する機能を有するのです。
ただし、将来世代に過度な借金の押しつけをしないことが基本です。その意味では、野田政権が民主・自民・公明の3党合意で進めた「社会保障と税の一体改革」の必要性は全く変わりません。
消費税率を来年10月に10%に引き上げるかどうか、安倍総理は来月に結論を出す方針ですが、私は基本的には法律通りに粛々と判断すべきだと思います。一方で、総理が国民の理解を得るべく、3つの「上げられる環境」を創ろうとしてこなかったことに強く憤りを感じます。
第1は「社会保障の充実」。法律上も予算・会計上も消費税はすべて社会保障に充てることになっています。しかし、安倍政権は安全保障は熱心ですが、どのように社会保障を充実させていくのか、特に、来年4月から本格施行を予定している「子ども・子育て支援新制度」を具体的に国民に示しきれていません。
逆に、社会保障費圧縮の議論ばかりが先行しています。社会保障も聖域化せずにメスを入れることは当然ですが、充実分野の制度設計をしっかりと行うことが先です。法人税減税の検討も同時並行で進んでいることも加わり、国民は何のための消費税引き上げなのか判らなくなっています。
第2は「身を切る改革」。おととしの11月14日の党首討論で、私と安倍総裁(当時)は「定数削減」を実現することを条件に衆院を解散する約束をしました。あれからちょうど2年。いまだに約束は果たされていません。あの約束は両党が国民の前で行った宣言であり、単なる口約束ではありません。討論の直後に覚書も交わしています。必ず実現しなければ、国民も納得しないでしょう。
第3は「経済成長」。税法の付則にいわゆる景気条項があります。経済状況等を総合的に勘案した上で、増税をするかどうかを判断するという条項です。景気が悪い場合は、増税の延期や中止もあり得るということです。
一か八かの賭博的な金融緩和や年金資金の株運用の比率を高めるなど、国債や株式の官製市場化には私は疑問をもっています。それでも、アベノミクスが成功しているというなら消費増税を見送るという結論にはならないはずです。仮に見送るというなら、アベノミクスの失敗を意味します。
「社会保障と税の一体改革」は、実は定数削減や経済の好転とも一体でなければならない改革なのです。