2年前の8月10日、私が政治生命を賭けると明言していた「社会保障と税の一体改革」関連法が成立しました。困難を極めましたが、民主・自民・公明の3党合意を踏まえてその困難を乗り越えることができました。
この法律の目的は、社会保障の充実・安定と財政健全化を同時達成することでした。そして、法律上も予算・会計上も消費税は社会保障の財源となりました。社会保障の充実については、子育て支援の拡充のため年約1兆円の追加財源を充てることを3党で合意していました。そのうち7000億円は消費税で手当てし、残り3000億円の財源捻出は検討事項となっていました。
ところが、安倍政権は安全保障に比べると社会保障については熱意がなく、子育て支援拡充のための財源の議論が全く進んでいません。その結果、来年4月から施行される子ども子育て新制度に暗雲が漂ってきました。
新制度の目玉として位置づけられているのが、専業主婦家庭の子どもは幼稚園、共働き家庭は保育所という枠組みを超え、幼児教育と保育を一体で行う「認定こども園」という施設です。幼稚園が保育も担うようになれば待機児童の解消につながりますし、保護者の育児相談や一時預かりなどを行う地域の子育て支援の拠点としての期待もあります。
しかしながら、制度設計の根幹である財源を詰めた議論がないため、財源不足でこども園への運営費の補助水準が低く抑えられる可能性が強まってきました。その結果、こども園の認定を返上したり、新制度下での状況を見極めて改めて判断したいという事業者がふえている模様です。ビジネス・モデルが成り立つ見通しもないまま、突っ込む事業者はいません。
経営判断の時期は、切迫しています。来年度の園児募集のためのパンフレットは、9月には策定しなければなりません。事業者は「限られた時間・情報」の中での判断が求められています。それに比べて、政府の準備はあまりにも遅過ぎます。また、事業者が国の新制度で不利益を被らないよう、政府が取り組んでいる姿勢も丁寧な対応も見られません。
少子化は、国が滅びる「静かなる有事」です。だから、社会保障のいかなる分野も重要ですが、とりわけ子育て支援の拡充は急務なのです。子ども子育て新制度が来年度から円滑に機能しなかったら、何のために消費税を引き上げたのか厳しく問われることでしょう。そして、待機児童を抱えるご家庭にとっては、対策が1年遅れるかどうかは死活的な問題であることを肝に銘じるべきです。