かわら版 No.930 『外患』
2013/12/0211月23日、中国国防部は、「東シナ海防空識別区」を設定し、当該空域を飛行する航空機に対し中国国防部の定める規制を強制し、これに従わない場合には中国軍による「防御的緊急措置」をとると発表しました。
この措置は、現場海空域において不測の事態を招きかねない非常に危険なものです。また、公海上の飛行の自由を不当に侵害し、国際航空秩序に対して重大な影響を及ぼすものです。尖閣諸島の領空があたかも「中国の領空」であるかのごとき表示をしており、わが国は到底受け入れられません。
政府が中国に対し、わが国の懸念を伝達、厳重に抗議するとともに、関連措置の撤回を求めたのは当然のことです。
それにしても、なぜ、中国はこの時期にこのような対外強硬路線をとってきたのでしょうか。私は、中国の国内事情と無関係ではないと思っています。最近、中国の国内各地でテロや暴動が頻発しています。これは特定の少数民族によるものではなく、政府の腐敗や格差拡大に対する民衆の抗議行動と見るべきです。
中国の国家予算を見れば、一目瞭然です。治安維持予算は約11兆2千億円で、国防費の11兆1100億円を超えているのです。即ち、中国は深刻な「内憂」を抱えた国なのです。共産党による一党支配国家といいながら、実は習近平体制の権力基盤は脆弱なのかもしれません。だからこそ、民衆の目を国外に転じさせようという衝動に駆られやすいのです。
日本としては、わが国の領土・領海・領空は断固として守り抜くとの決意で毅然かつ冷静に対処することに尽きます。併せて、国際社会と連携しつつ、中国に強く自制を求めることです。
幸い、同盟国である米国は、いち早く中国の措置に対して深い懸念を表する声明を発出しました。ヘーゲル国防長官は日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用を再確認しました。豪州も「いかなる力による又は一方的な行動にも反対する旨の外相表明を発出しました。
心もとないのが韓国です。自国の防空識別圏とも重なるはずなのに、国防省スポークスマンレベルの遺憾の意の表明にとどまっています。日韓関係の冷え込みが原因なのでしょうか。
それにしても、朴槿恵(パク・クネ)・韓国大統領は、東アジアにおける安全保障をどのように考えているのでしょうか。米国に行っても欧州に行っても日本の悪口、陰口ばかり。「言いつけ外交」に終始しています。文句があるなら、日韓首脳会談で直接言ったらどうでしょうか。
日中のみならず、日韓もわが国にとっては「外患」です。