かわら版 No.900 『花見酒』
2013/03/25今春の桜の開花は、平年より早いようです。今週末は、海老川沿いや近隣の公園など花見客でにぎわうのではないでしょうか。
落語に「花見酒」という演目があります。桜の季節に、長屋に住む兄貴分の熊さんが、弟分の辰さんに「安い酒を仕入れて、花見客に高く売りつけ、ひともうけしよう」と、持ちかけます。詳細は省きますが、実体をともなわない砂上の楼閣のような金の往来を繰り返し、花見の場に着くころには、背負った酒がすっからかんになってしまう話です。
この落語を、最初に日本経済に当てはめて論じたのが、笠信太郎氏。高度成長期まっただ中の昭和37年、「花見酒の経済」を著わし、日本の急激な繁栄ぶりを「花見酒のような危うさがある」と警告しました。以来、バブル萌芽期に決まって引用されるようになりました。
折しも、安倍政権は2%というインフレ目標を掲げ、日銀総裁・副総裁もリフレ派で固め、物価上昇の流れを作り出そうとしています。株価の値上がりも続き、景気回復の期待も高まっています。景気は「気」に左右されますので、前向きな明るい気分が醸成されることは歓迎すべきです。モノも土地も上がっていく雰囲気もあります。ただし、いつまでも日本経済に実体的な力強さを感じられないと…。
先般、海外の投資家たちと会食する機会がありました。日本の市場に強い関心と投資意欲をもつ人たちでした。そのうちの一人が、アベノミクスをA(ASSET)、B(Bubble)、E(Economy)と、すなわち「資産バブル経済」だと喝破しました。ヘッジファンドも含め、投機筋はいま日本買いです。しかし、実体経済が力強く上向くことなく、「気」だけの「バブル」が膨らむだけでは、いつ破裂するか不安です。
「花見酒の経済」に陥ることにならぬよう、第3の矢である「成長戦略」こそが重要です。