かわら版 No.1449 『自動車高関税を回避せよ』
2025/03/28年度末は令和7年度当初予算案や企業団体献金を巡る攻防などがあり、「かわら版」のネタ選びに迷っていました。ところが、3月27日未明、ビッグニュースが飛び込んできました。
トランプ大統領が記者会見し、米国に輸入されるすべての自動車に対して、25%の関税を課すと発表しました。日本からの輸入車も対象となります。関税は4月3日から発効されます。米国は現在、自動車に2.5%の関税を課していますので、税率が現行の10倍になるということです。
日本から米国への輸出の約3割を自動車関連が占めています。25%の関税は自動車メーカーだけでなく、日本経済全体に甚大な影響を与えることになるでしょう。そして、このまま関税が発動されれば、世界経済はインフレと景気後退が併存するスタグフレーションに陥りかねません。
トランプ大統領は既に、日本も含めて鉄鋼・アルミは追加関税賦課をスタートしています。日本の国内法制(関税法、外為法)は、欧州やカナダが行ったような米国への即時対抗措置を独自の判断では実施できないと解されています。
とすれば、ルールベースの通商政策を掲げるわが国としては、せめてWTOに提訴すべきなのですが…。同盟国である米国のトランプ大統領の機嫌を損ねたくないのでしょうか。現時点で何も対策を講じていません。
しかし、今回の自動車に対する関税はすべての貿易相手国が対象であり、同盟国も敵対国も関係ありません。米国は今回の措置で、新たに年間1千億ドル(約15兆円)を超える税収を期待しています。
日本は米側に、自動車関税の対象から日本を外すよう求めてきました。3月10日、武藤経産大臣が訪米してラトニック商務長官と面談し、日本の除外を要請しましたが言質を得られず帰国しました。
そもそも、第1次トランプ政権下の2019年8月、安倍総理=トランプ大統領の首脳間、茂木大臣=ライトハイザー通商代表の間で、米側が日本産の自動車完成車について通商拡大法232条に基づく追加関税の対象にしないことは、明示的に確認されていました。
そのことを前提に、TPPに参加していない米国に、TPPに参加しなければ得られないはずの関税メリットを供与しました。特に、米国産牛肉や豚肉の関税削減は米国にアメ玉を与えたような効果がありました。
これが「日米貿易協定」の妥結内容の本質です。米国が日本産自動車に追加関税を課すのであれば、日米貿易協定の前提が崩れます。となれば同協定に基づく米国の関税メリットを停止させるのが筋です。
もはや「日本だけは例外扱いに」と頼み込むのではなく、石破総理が主導してトランプ大統領との間で、日米協定の停止・再交渉をすべきです。日本のためにタフネゴシエーターに徹してほしいと思います。