かわら版 No.1370 『危機管理よりも政局優先か』
2023/07/31打っても投げても超一流の大谷翔平選手の活躍を毎日楽しみにしています。エンゼルスの試合経過や結果を常にチェックし、大谷選手がホームランを打つと「やった!」と、快哉を叫びます。高い放物線を描いた滞空時間の長いものや超低空弾丸ライナーなど、本塁打を量産しています。
北朝鮮も弾道ミサイルを乱射しています。今年に入ってもう既に12回。「またかよ。いい加減にしろ」と、思わずつぶやきたくなります。米国全土が射程に含まれる大陸間弾道ミサイル(ICBM)級や、変則軌道で飛んだり「極超音速」で低い高度を飛ぶものなど、多様なミサイルを撃ちまくっています。
大谷選手の本塁打はファンの夢を運び希望をかなえます。北の弾道ミサイル発射は邪悪な思惑しかありません。しかし、ミサイル発射の繰り返しに政府も国民も「慣れ」が生じていないでしょうか。慣れきることは実は恐ろしいことです。
金正恩が北朝鮮の最高指導者になったのは、2011年の暮れでした。野田政権下の2012年に2回弾道ミサイルを発射しました。そのたびに各府省の大臣、副大臣、政務官の政務3役には禁足(一定の場所から外へ出るのを禁止にすること)を指示しました。ところが今夏、岸田政権の閣僚や党の有力幹部は外遊三昧です。緊張感が足りません。
岸田総理ご自身の危機感も欠如しています。6月の通常国会会期末に自ら解散風を吹かそうとしました。北朝鮮による弾道ミサイル発射に備えて「破壊措置命令」を延長し迎撃態勢をとっている時に、総理は政治空白をつくろうとしていました。国民の生命と財産を守ることよりも明らかに政局を優先していました。24万人の自衛隊の最高指揮官として失格です。
もし総選挙中にミサイルが発射されたらどうするのでしょう。実は岸田政権には悪しき前例があるのです。
2021年10月14日、岸田総理は衆議院を解散し、19日から選挙が公示されました。この公示日の午前10時15分と16分に、北朝鮮が弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射しました。この時、総理は福島市で遊説中でした。松野官房長官も千葉県内の自身の選挙区で選挙活動中でした。
ミサイル発射当時、危機対応の陣頭指揮を担う総理大臣も官房長官も東京を不在にしていました。官邸の危機管理を巡っては、2001年の森喜朗政権時代に起きた「えひめ丸事故」以来、選挙中でも総理か官房長官のどちらかが都内に待機するのが慣例でした。
第2次安倍政権の頃から少しずつ慣例を破る傾向がありましたが、岸田政権は明らかに危機管理よりも政局を優先しています。しかし、発射頻度を増やせば増やすほど偶発的な事故が起きる可能性が高まります。慣れは禁物です。