かわら版 No.1282 『同じ轍を踏むな‼』
2021/08/16五輪は終わりましたが、第五波はまだ収束していません。コロナ禍に加え連日の猛暑も重なる折柄、感染症にも熱中症にも十分ご注意ください。さて、今号は大きな数字を羅列する内容になり、頭がクラクラするかもしれませんがお許しください。
2020年度の国の予算は新型コロナウイルス対策のために3回も補正を組んだことにより、過去最大の175兆円超まで膨らみました。しかし、その約2割の約30兆円超が年度内に使い切れず、2021年度に繰り越されました。政府・与党は規模ありきで予算を編成し、政策の中身の吟味が不十分だったということでしょう。
新型コロナ対策のための第1次~第3次の補正予算合計額約73兆円に限ると、概算で3割弱の20兆円程度を使い残していました。巨額予算を盛んにアピールしてきましたが、コロナ禍に苦しむ国民や事業者に必要な支援が届いていなかったことを示しています。
度重なる緊急事態宣言の発令により、観光支援事業「Go To トラベル」が1兆3353億円塩漬けになっています。このように支出を進めるべきではない予算も散見されます。アベノマスクの配布などどうでもいい予算はしっかり執行されていますが、手続きが繁雑など使い勝手の悪さが支給を遅らせているケースもあります。早急に改善すべきです。
たとえば、「地方創生臨時交付金」。休業や営業時間の短縮要請に応じた飲食店への協力金です。3兆6300億円の予算枠でしたが、給付が追いつかず、3兆3115億円も今年度に繰り越されました。
帝国データバンクによると「新型コロナウイルス関連倒産」(法人および個人事業主)は、全国で1870件(8月10日現在)。業種別の第1位は飲食店(311件)ですから、迅速な予算執行に努めるべきです。
そして、先週号でとり上げた「緊急包括支援交付金」。新型コロナ患者の受け入れに協力する医療機関を支援するため、約1兆5千億円予算措置されましたが、そのほとんどが繰り越されています。国民の命と健康を守るため、迅速な実施が求められています。
このように昨年度に使い切れずに今年度に繰り越されたお金が約30兆円にも上るにもかかわらず、自民党は巨額な追加経済対策を要求しています。二階俊博幹事長はその規模について「30兆円近いものを考えないといけない」と強調しました。衆院選を間近に控えているので菅総理も与党の要求を受け、巨額なコロナ対応と経済対策の策定を指示するでしょう。
しかし、新たに大盤振る舞いする前に、既存の予算が支援の必要な人や現場に直ちに届くようにすることこそ先決ではないでしょうか。精査しないで規模だけ積み上げる愚を繰り返してはなりません。同じ轍を踏むなと警告するのが野党の役割であり、選挙を意識して予算規模の競争などすべきではないと思います。