かわら版 No. 1263 『掟破り』
2021/03/29旧大蔵省の接待汚職問題がきっかけとなり、2000年、国家公務員倫理法では利害関係者から供応接待を受けることなどが明確に禁止されました。ところが、菅総理の長男が勤める会社に総務省幹部がたびたび接待されていた問題が報じられて以降、歴代総務大臣や総務官僚と利害関係者とのズブズブの関係が次々と明らかになっています。
法律のみならず、2001年2月以降続けられてきた官邸の危機管理の不文律も破られています。
米海軍の原子力潜水艦と衝突した宇和島水産高校の練習船が沈没し、9人が死亡する事故が起きた時に、当時の森喜朗総理が連絡を受けてもゴルフを続けて対応が遅れた「えひめ丸事故」の際、福田康夫官房長官も官邸不在でした。以来、総理と官房長官の必ずどちらかは在京するようにすることが、鉄則となりました。
崩れ始めたのは2014年9月17日、安倍・菅コンビからです。秋の知事選の直前に、安倍総理は福島に菅官房長官は沖縄に向かったのでした。そして、2016年の参院選投票日前における両者の不在は危機管理上大いに問題だったと思います。
中国海軍の軍艦が日本の領海に侵入した6月16日、総理は東北6県で官房長官は宮崎で遊説でした。イギリスのEU離脱が確定した6月24日、金融市場が荒れた時も2人とも不在でした。市場が閉まった後に総理が戻り、関係閣僚会議を開きましたが、北海道に行っていた官房長官は間に合いませんでした。邦人7名が亡くなったダッカの襲撃事件が発生した7月2日、菅官房長官は安否も確認せずに新潟に向かいました。
さらにエスカレートしたのは、2019年の前回参院選期間中でした。公示から投票日前日までの17日間、総理も官房長官も共に官邸を不在にして選挙応援に奔走しました。「国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態への対処及び当該事態の発生の防止」という危機管理よりも、明らかに政局を優先したと言わざるをえません。
これらの事を2月15日の衆院予算委で厳しく指摘すると、菅総理は「選挙をどう考えるかです。やはり政府の対策を、国民の皆さんに理解して頂くことは、ある意味で民主主義の根幹ではないでしょうか」と、反論しました。官邸を空っぽにした17日間のなかには、大規模買収事件で議員辞職した河井案里氏の応援も含まれています。
大規模買収の原資は、自民党本部が資金提供した1億5千万円でしょう。河井氏辞職に伴い4月8日から広島では再選挙が実施されますが、本来自民党は候補者を擁立すべきではありません。ところが臆面もなく公認候補を決定しました。河井夫妻から現金を受けとった約百名もの地方政治家らもフル稼働するのでしょうか。不正の上塗りです。
掟破りの菅総理に民主主義の根幹を語る資格などありません。その事を思い知らせる選挙結果にしたいものです。