詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1150 『総理の出口発言』

2018/10/01

  自民党総裁選は大方の予想通り、安倍総理が3選を果たしました。この結果、来年には佐藤栄作の戦後最長の在職日数2798日のみならず、憲政史上最長の桂太郎の2886日を抜く可能性も出てきました。お蔭で、私も引き続き前総理と呼ばれ続けることになります。1日も早く元総理になりたいのですが…。


  総裁選中、安倍総理から驚くべき発言が飛び出しました。異次元の金融緩和政策について、「ずっとやっていいとはまったく思っていない」と。そして、金融緩和を縮小する「出口」について、「なんとか私の任期中のうちにやり遂げたい」と。


  そもそも第2次安倍政権は、デフレ脱却と持続的な経済成長をめざしていたはずです。その実現のために「2%の物価目標を、2年で達成する」と豪語する黒田東彦氏を日本銀行総裁に選び、大胆な金融緩和を推進してきたのでした。


  しかし、「2年」という目標は6回も達成時期が先送りされた挙げ句、今年4月からは日銀の展望レポートから達成時期が削除されました。「2%」の物価上昇目標は維持されていますが、安倍総理の任期中に達成する見込みはありません。麻生財務相にいたっては今頃になって、「本気で達成できるとは思っていなかった」と白状する始末です。


  総理も財務相も無責任過ぎます。私は、そもそも物価至上主義者ではありません。金融政策一辺倒で簡単に物価が上がるとも思っていません。だから、副作用を極小化しながら、早く出口を見い出すべきだという立場です。しかし、安倍総理の場合は、リフレ政策に踊らされたアベノミクスは失敗だったときちんと反省した上で、緩和策の出口戦略を語るのが筋ではないでしょうか。


  総理は、具体的な時期や手法は「黒田総裁に任せている」とも語っています。もちろん、金融緩和は専ら日本銀行の役割ですが、異次元緩和の出口の道筋をつけるのは容易ではありません。要は、出口とは金利を引き上げて金融政策を正常化することですが、日銀が保有する国債を売却し、金利上昇を誘導するなどの方法はあるでしょう。でも、今の財政状況で金利を引き上げられるでしょうか。


  日銀が大量に国債を買い取り、長期金利を極めて低い水準に抑制しています。その結果として、国債の利回りが1%程度で抑えられているので、約1000兆円もの政府の借金の利払い費が約10兆円で済んでいるのです。長期金利が上昇すれば政府債務の利払い費は急増し、日本財政は立ち行かなくなります。


  超低金利の期間中に、社会保障改革や予定されていた増税を実施し、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化など、財政再建を進めるべきでした。その努力を安倍政権が怠ってきたことにより、日銀は財政破綻リスクまで背負い、身動きがとれなくなってしまいました。総理の「私の任期中に…」発言は、軽々しく無自覚過ぎます。


  

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