詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1138 『骨抜きの方針』

2018/07/02

  2001年から自民党政権下で政府が毎年発表する「経済財政運営の基本方針」を、通称「骨太の方針」と呼んでいます。総理が議長を務める経済財政諮問会議の答申を経て、年央に閣議決定します。


  毎年「骨太」というよりも骨粗しょう症のような骨密度の低い内容でしたが、6月15日に閣議決定された「骨太の方針(2018)」は、例年よりも見劣りする「骨抜き」のスカスカでした。


  借金に頼らず税収で社会保障や公共事業などの政策経費を賄えるかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化は、その達成時期が最も注目されていました。これまでは2020年度に達成する予定でしたが、今回は2025年度をめざすことになりました。5年間の先送りです。安倍政権が発足して5年半になりますが、この政権の在任期間分、財政健全化が遅延したことになります。


  2025年度までの中間年である2021年度に、詳細は省きますが3つの中間指標を設定し、進捗を管理することになっています。この中間指標が大甘ですから、恐らく到達可能でしょう。ちなみに安倍氏が9月の自民党総裁選で3選を果たせば、その任期は2021年までです。安倍政権が続けば、痛みを伴う改革は先送りされ続けることになるでしょう。


  その後を引き継ぐ人が、七転八倒することは間違いありません。2022年度から団塊の世代が75歳(後期高齢者)に入り始め、医療、介護などの社会保障費が急増する見込みです。その社会保障も含めて「歳出改革の目安」となる数値目標も設定されていません。このため毎年の予算編成でなし崩し的に歳出が膨らみかねません。


  財政を健全化するには、「入」を増やすか、「出」を削るかしかありません。日本の危機的状況を考えると、両方ともやらなければなりません。しかし、安倍政権は支出を減らすより、税収を増やすことを重視しています。しかも、その税収増も消費税引き上げなどの増収より、経済成長頼みです。


  骨太で想定しているGDP成長率は名目でプラス3%、実質がプラス2%です。1995年度から2016年度の名目GDP成長率の平均は0.3%でしたから、実績とかなり乖離した好景気を前提としています。すなわち、骨太の方針は水増し成長率を前提とした「絵に描いた餅」です。


  こんなデタラメな方針の背景の1つに、財務省の劣化があります。「森友」ではウソの上塗り、セクハラ問題では恥の上塗り、そして、骨太ではインチキの上塗りです。正確で信頼できる数字を武器に厳しく査定すべき官庁が、数字まで忖度するようになったのでしょうか。不祥事をしっかりと総括し、本来業務では嫌われても気骨を示す官庁に復活してほしいものです。


   気骨は与野党国会議員にも求められています。子、孫の世代にツケを残さないために、私も奮起する覚悟です。


  

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