かわら版 No.1132 『膿(うみ)を出せ』
2018/05/21安倍総理は4月17日、米国出発前の記者会見で、次のように明言しました。
「行政をめぐり、さまざま問題が指摘されております。信なくば立たず。国民の信頼を得るために、行政のトップである私自身が1つ1つの問題について責任を持って必ず全容を解明し、膿(うみ)を出し切っていく決意であります」と。
「一点の曇りもない」と言い張っていた人の豹変ぶりに驚くと同時に、多少期待もしました。しかし、約1か月経過しましたが、総理は腫れた患部に手を触れようともしていません。
まずは、森友学園への国有地売却に関する財務省の公文書改ざん問題。野党は4月から改ざん前の決裁文書の国会提出を求めてきました。ようやくゴールデンウィーク明けの5月7日、18日に改ざん前文書を提出することで与野党が合意しました。ところが、約束は反故にされ、提出時期は23日に延期されました。
3千ページを超える改ざん前の決裁文書の公開範囲に手間取っているとの由。のり弁のように黒塗りする作業に本当に時間がかかっているのか。それとも、6月20日の会期末が近づく中、質疑時間を減らすための遅延行為なのか。いずれにしても、真相解明にむけて腰の重い政府・与党に対して、総理ははっぱをかける素振りも見せません。
次は、加計学園の獣医学部新設をめぐる問題です。安倍総理と一心同体であった柳瀬・元総理秘書官が、事業者公募の1年半以上前の2015年春に、加計関係者と3回も会っていたことが明らかになりました。国家戦略特区担当の藤原・内閣府地方創成推進室次長がその年の8月、わざわざ加計グループの岡山理科大と今治市に出張していました。その際、交通手段として加計学園の車を使用したにもかかわらず、出張記録には官用車と虚偽記載していました。「加計ありき」の状況証拠は揃っています。
あとは、愛媛県が作成した文書の通り、柳瀬元秘書官が「本件は、首相案件」と述べたかどうかです。真に膿を出し切る気があるならば、「ウソは第三者、他人を巻き込んでいく」「職員は子供の使いではない」と記者会見した、時の人・中村時広知事を国会招致するべきです。しかし、与党は中村知事の参考人招致を頑なに拒み続けています。
疑惑解明までようやくあと1歩まで肉薄してきている時に、米朝首脳会談が間近に迫るなど国際情勢が重要な局面を迎える中、いつまで森友・加計の追及ばかりしているんだというご意見もあります。解明に及び腰の政府・与党の姿勢こそが最大の問題であると同時に、外交については外務委員会できちんと政策論争が行われていることを付言しておきます。
ナチス・ドイツを打ち負かした最大の功労者・チャーチル率いる保守党は、1945年7月の総選挙で敗れ、スターリンの横暴と戦っていかねばならない英国外交の大転換期に宰相は野に下りました。英国の民主主義の懐の深さを強く感じます。