かわら版 No.1059 『解散風』
2016/10/24与党幹部が解散風をビュービュー吹かすような発言を繰り返しています。自民党は、当選1、2回の若手を対象に「選挙塾」を開きました。独自の選挙区情勢調査も行うようです。そして、通常は1月に開催する党大会を、3月に延期しました。早期に衆院の解散・総選挙を行う状況証拠は、十分過ぎるくらい揃っています。
衆議院議員はいつも常在戦場の緊張感をもっていなければなりません。特に野党は、「待ったなし」ですので、立ち遅れないように注意しなければなりません。民進党としては10月中に全国の状況を総点検し、1人でも多くの衆院選候補者擁立に向けて急ピッチで作業を進めます。
このような大前提に立ちながらも、この時期の解散・総選挙は極めて疑問です。
1票の格差を是正するための「0増6減」の区割り案が答申されるのは、来年の5月頃です。区割り変更前の解散は、違憲状態のまま選挙を行うということです。区割り変更は利害関係者の多い自民党に困難な調整を強いるので、その前に解散総選挙を行うという思惑は、党利党略が露骨過ぎます。しかも、前回総選挙からまだ2年しか経っていません。
天皇陛下が意向を示された「生前退位」を含め、公務の負担軽減等について「有識者会議」による論点整理が始まりました。政府は来年の通常国会で法整備を行う予定です。
ということは、この議論が静かに行われている途中で解散となれば、皇位継承のあり方等が総選挙の争点になってしまう可能性が高まります。各党・各候補者が選挙公約に掲げるかどうかはわかりませんが、重要テーマなのでメディアや市民団体によるアンケート調査は間違いなく実施されるでしょう。皇室のあり方については、私は断じて争点化してはいけないと思っていますが、総理が鈍感でないことを強く祈るばかりです。
そもそも国民に信を問う大義名分があるのでしょうか。
12月にプーチン・ロシア大統領が訪日しますが、日露首脳会談で北方4島の帰属問題が進展するのではないかと、期待が高まっています。そして、そのことをもって信を問うという人もいます。果たして、この外交課題が信を問うようなことでしょうか。
仮に、国後、択捉、歯舞、色丹の4島のうち、歯舞と色丹の2島が返還されるとしましょう。これは全体の半分を返すという話ではありません。この2島の面積は、4島全体の約7%にしかすぎないのです。すなわち、約70年前に100万円を奪った強盗が、今ごろになって7万円だけは返してやるよと言っているのと同じです。馬鹿も休み休み言えってところです。
この程度の政治決断なら、歴代政権はとっくにやっています。笑止千万です。それを国民は外交成果として認めるのでしょうか。