かわら版 No.1043 『再延期』
2016/06/016月1日、通常国会が閉幕しました。その日の夕刻、安倍総理は来年4月の消費税率10%への引上げを2年半先送りする方針を、記者会見で表明しました。
開いた口が塞がりません。おととしの11月、安倍総理は消費税の引上げを1年半延期するとともに、それを理由に解散・総選挙を断行しました。その時の記者会見では、次のように大見得を切っています。
「再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりと断言いたします。平成29年4月の引上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています。」
あれから1年半、格差と貧困が拡大し、とても増税できる環境にはないと判断せざるを得なくなったのでしょう。本来ならば国民との約束を破ったのですから、責任を取るべきです。アベノミクスの失敗を素直に認めるべきです。
ところが、驚いたことに総理は、先の伊勢志摩サミットにおいて、突然、世界経済がリーマンショック前と似た状況であるとの認識を示し、各国首脳を当惑させました。そして、5月27日のサミット議長記者会見では、総理冒頭発言で5回もリーマンショックという言葉を使っています。リーマンショック並みの危機に陥るリスクがある時に、米国が再び利上げするでしょうか。あり得ません。
自らの経済失政を世界経済の問題にすり替え、G7を政治利用して消費税引上げ再延期を正当化したかったのでしょう。恥ずべき醜態です。そもそも、これまでの国会答弁との整合性が全くありません。総理は一貫して次のように答弁してきました。
「来年4月の消費税率10%への引上げは、リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施していく考えであります。現在、そうした重大な事態が発生しているとは考えていません」と。
さて、2019年10月まで増税を再延期するということですが、誰が責任をもつのでしょう。安倍総理の自民党総裁としての任期は18年9月までです。自分の任期中は不人気な政策は実施しないということです。そして、長期金利をマイナス圏まで沈ませ、国が借金をすればするほどもうかる状況をつくり、財政規律を大きく緩めた黒田東彦日銀総裁の任期は、18年4月までです。
2人とも日本の財政と金融を滅茶苦茶にして、逃げようとしています。その後、誰が立て直しできるでしょう。私は、社会保障を充実・安定させ、財政健全化を実現するためには、国民に土下座してでも予定通りに消費税を10%に引き上げるべきだと思います。それしか、日本と若者を救う途はありません。