かわら版 No.1034 『貧困の連鎖を止めよう』
2016/03/282013年11月、「赤ちゃん取り違え事件」を巡る判決が大きな話題になりました。60年前、都内の病院で同じ日に生まれた2人の男児が取り違えられた事件であり、病院側に賠償を命じた判決でした。
本来なら裕福な家庭の長男として生まれたはずのAさんは、生活保護を受けながら暮らす母親の下で、6畳1間のアパートで兄2人とともに育てられました。中学を卒業後、町工場に就職。働きながら定時制の工業高校を卒業しましたが、大学進学の夢は果たせませんでした。判決当時は、血のつながっていない兄の介護をしながら、トラック運転手をしていました。
一方、Aさんの13分後に出生したBさんは何らかの理由で取り違えられ、経済的に恵まれた家庭で育ちます。子どもの頃から家庭教師がつき、私立高校を経て大学にも進学。後に生まれた弟たちとともに、既に亡くなった両親の遺産も相続し、現在も安定した人生を歩んでいます(船橋在住)。
この事件は、運・不運で片づけてしまう問題でしょうか。裕福な家庭で育てば、学ぶ機会にも恵まれ、豊かな人生を送れる。片や極貧家庭に生まれれば、学ぶチャンスを奪われ、辛苦の一生を送る。生まれた環境に格差があった場合、映画やドラマのようにその差を逆転することは困難であり、個人や家庭の努力だけでは格差はなくならないのが現実なのではないでしょうか。
子どもは親を選べません。ならば、どんな家庭に生まれようと、仮に取り違えられようが(あってはならないことですが)、子どもの育ちや学びを社会がしっかりと後押しをして、機会の均等を実現していかなければなりません。
現在の子どもの相対的貧困率は約16%にも上り、6人に1人の子どもが貧困状態にあります。とりわけ、ひとり親世帯の窮状は深刻で、OECD加盟国34か国中で最悪の50.8%となっています。
折しも、ひとり親家庭に支給される児童扶養手当を拡充する法案が審議されています。政府案では第1子に比べて極端に低くなっている第2子を5千円から1万円に、第3子以降を3千円から6千円に引き上げることとなっています。引き上げ自体は是としますが、第2子と第3子以降で金額を変える理由は不明です。
民進党を含む野党は、第2子と第3子以降で差をつけず、第2子以降1万円に引き上げる改正案を提出しています。同案では、現在18歳までとなっている支給上限年齢を20歳まで延長することとしています。是非とも野党案を実現させたいと思います。
学費の負担の重さを考えると、奨学金改革も急務です。現在の貸与型奨学金では多数の借金を抱えて社会に出ることになってしまい、格差の連鎖が続くことになりかねません。返済不要の渡し切りである給付型奨学金が導入されていないのは、先進国ではほぼ日本だけです。民進党は、給付型奨学金の導入もめざします。