詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1012 『TPP大筋合意につい』

2015/10/19

  環太平洋戦略的経済連携協定(TPP協定)交渉は、参加12か国が大筋で合意しました。TPPの意義を初めて国会質疑で取り上げたのは、私です。そして、2011年11月、民主党内の激論を経て、交渉参加に向けて協議に入る決断をしたのは野田政権でした。だから、今般の大筋合意には特別な感慨があります。
私が、TPP交渉について強い関心を持っていたのは、以下の理由からです。


  第一に、WTO(世界貿易機関)ドーハ・ラウンド交渉を通じてグローバルな規模で貿易や投資のルールをつくることは、絶望的とまでは言いませんがかなり悲観的だからです。とすると、貿易立国であるわが国がとるべき途は、2国間や多国間の経済連携を積極的に推進することです。特に、TPP交渉参加12か国の経済規模は3100兆円で、世界全体の4割を占め、参加の可能性を探らないという選択はあり得ないと思っていました。


  第二は、世界の成長エンジンとして期待されるアジア太平洋地域において、日米がルールづくりを主導することに意義があるからです。それは、経済面のみならず安全保障面も含めて、アメリカをこの地域へと軸足を移動させる効果があります。一方、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)などを通じてアジア太平洋地域におけるルールづくりに野心的な中国に対して、先手を打つ効果もあります。TPPは常にオープンですから、中国が後に参加しても構いませんが…。


  このような戦略的観点から、交渉参加に向けて関係国と協議を続けていましたが、2012年11月、私は衆院を解散し総選挙に突入しました。選挙戦の最中に自民党の有力者から電話が入りました。


「自公政権がまたできたら、TPPに入らざるを得ないだろう。野田政権のうちに正式に交渉参加すると表明してくれないか」と。
「あなた方は全国各地で、TPP反対の大合唱をしているではないか。もし、私が参加表明すれば賛同してくれるか」と、私は尋ねました。すると、
「いや、強く批判する」と、驚くべき回答。


  私は、この身勝手な要請を断りました。自動車分野などで米国の頑なな姿勢がネックとなり、とても交渉参加できる状況ではなかったからです。その後、安倍政権が誕生し、程なく自公政権は有力者の予告通りTPP交渉に参加することを決めました。全力で選挙支援をしていたJAの皆さんも、この豹変には唖然としたことでしょう。


  私も野党になったからといって、豹変する訳にはいきませんが、最終的な賛否はまだ留保したいと思います。TPP交渉は秘密のベールに包まれており、30章もある協定のテキストが公表されない限り、詳細はわかりません。国益を踏まえて、勝ち取るものは勝ち取れたか、守るべきものは守れたか、慎重に検討したいと思います。

 

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