詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1009 『民意に反する強行採決』

2015/09/19

  安全保障関連法案の衆院における審議は、約116時間。参院においては約100時間でした。衆参両院における合計約216時間をもって、政府・与党は「議論は尽くされた」「採決の環境が整った」と強弁しました。1本の法案を各院で100時間以上審議したなら、その主張は正しいと思います。

  しかし、安保関連法案は、「国際平和支援法案」という新法と、自衛隊法など既存法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」の2本立てになっていますが、後者は10本の法改正を含んでいるのです。

  すなわち、実は11本の法案であり、対象となる自衛隊の活動が広範囲にわたっているのです。衆参ともに100時間以上審議したと言いますが、法案1本あたりわずか10時間に過ぎず、全く不十分です。この程度の議論で、我が国の安全保障政策を根本的に転換することなど到底許されません。

  しかも、安倍総理や関係閣僚の答弁が二転三転しました。安倍総理は集団的自衛権を行使する「存立危機事態」の事例として、衆院ではホルムズ海峡の機雷掃海と避難する邦人を輸送中の米艦防護を挙げていました。しかし、参院の質疑を通じてそれらは具体的に該当しないことが明らかになりました。逆に、中谷防衛大臣は、その対象が政府の裁量で際限なく拡大することを明らかにしました。

  一貫性のない答弁が続いたため、衆参ともに100回以上も審議が中断しました。審議を重ねれば重ねるほど疑問が湧くのは、欠陥法案だからです。危機感を抱いた多くの皆さんが、連日国会周辺に押し寄せてきました。若者からお年寄りまで、動員された人ではなく自分たちの意思で集まってこられました。このような国民の声に安倍政権は全く耳を貸そうとせず、力ずくで採決を強行しました。

  3年前、私が総理大臣の時も、連日原発に反対するデモ隊に官邸を取り囲まれました。原発を含むエネルギー政策については、討論型世論調査や地方ごとの意見聴取の会を開くなど、できるだけ民意を把握しようと努めたつもりでした。しかし、官邸を取り囲む運動は、ずっと続きました。そこで、運動の代表者たちを官邸に入れて、直接お話をお伺いする機会をつくりました。

  猛者たちを前に、私は緊張していました。でも、驚いたことに彼(女)らは、内閣総理大臣を前にもっと緊張していました。普段から大胆不敵なのではなく、止むにやまれぬ思いで意を決して行動していることがよくわかりました。お互いに理解し合えたわけでもなく、彼らの主張をとり入れたわけでもありません。しかし、生の声に触れることができて良かったと思いました。

  安倍総理は、安保法案に対する国民の理解が深まっていないことは十分認識しています。しかし、時がたてば必ず評価されると確信しているようです。私は、思い上がりだと思います。違憲訴訟が続き、立ち往生するのではないでしょうか。
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