平成26年の第2四半期(4~6月期)の実質国内総生産(GDP)は前期(1~3月期)と比べてマイナス1.7%(年率マイナス6.8%)と、2四半期ぶりのマイナスとなりました。家計は増税の前に買いだめするので、4月に消費税を5%から8%へ引き上げる以前にはかけ込み需要が発生しました。増税後は店頭の価格上昇が圧迫感となり、反動で需要は落ち込みます。したがって、想定の範囲内の変動幅とみることはできます。
重要なのは、第3四半期(7~9月期)に経済が立ち直るかどうかです。この時期は夏らしく厳しい暑さが続くと、季節性商品が売れ景気は良くなります。しかし、今年は集中豪雨等の自然災害が全国各地を襲い、景気の足を引っ張っている可能性があります。
もっと気になるのは、平成25年第4四半期(10~12月期)の実質GDPが年率でマイナス0.2%だったことです。世の中は消費税の景気への影響ばかりを気にしていますが、その以前からアベノミクスの期待値が剥がれ始めているのではないでしょうか。
アベノミクスへの期待の第1は、日本銀行の異次元の金融緩和です。日銀が大量の国債を買い取り、巨額の資金を投入し、円安を誘導すれば輸出が大きく伸びるはずでした。しかし、生産拠点を海外に移しておいた企業が多く、輸出の動きは鈍いままです。責任ある立場にあった者が迂闊に相場観を語ってはいけないと思いますが、私はまだ円安が進むと思います。しかし、輸出による力強い成長につながらないのではないでしょうか。むしろ、輸入燃料価格の上昇など国民生活への悪影響だけが目立つようになるでしょう。
アベノミクスへの期待の第2は、賃上げや失業率の改善でありました。しかし、バークレイズリサーチの調査によれば、第2四半期において、実質賃金は対前年比マイナス3.2%となり、過去18四半期中、最大の下落となりました。総理が経済団体に賃上げの要請をしている報道が盛んに行われましたが、要は、その賃金引き上げが物価上昇分まで届いていないということです。安倍政権下で雇用は増えました。しかし、その多くは賃金と手当の低い「非正規」ばかりです。
第3四半期(7~9月期)の実質GDP等の速報値が公表されるのは、11月頃でしょう。もし、その数値が芳しくないものであったら、アベノミクスへの期待は剥落し、その政策の本質が資産を有する投資家だけを豊かにし、他の者を置き去りにするものだとわかるでしょう。
その時、日本は重大な岐路に立ちます。よりジャブジャブの金融緩和に猛進したり、「地方創生」の美名の下でバラマキ予算を組むなど一か八かのバクチに出るか。冷静に過ちを正していくかです。
経済成長と財政健全化が両立できるよう、厳しくチェックしていく決意です。