詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.953 『法の支配』

2014/06/09

  1941年、ルーズベルト米国大統領とチャーチル英国首相は、戦後秩序の8原則を盛り込んだ大西洋憲章をつくりました。そして、時は移り、今やアジア太平洋の時代を迎えました。日本は米国とともに太平洋憲章をつくるくらいの戦略性をもって、この地域における秩序やルールづくりを主導すべきである、これが私の持論です。

  アジア太平洋地域におけるチャンスを拡大するため、貿易や投資のルールをつくるTPP(環太平洋経済連携協定)はとても重要です。一方、この地域におけるリスクも顕在化してきました。東シナ海、南シナ海といった海洋を巡るトラブルです。アジア太平洋においては、このようなリスクを回避するためのルールも益々重要になってきました。

  そのような中で、先週シンガポールで「アジア安全保障会議」(シャングリラ・ダイアローグ)が開催されました。安倍総理は中国を名指しはしませんでしたが、「力を背景とした現状変更」を許してはならないことを訴え、①主張は国際法に基づく、②主張を通すために力や威圧を用いない、③紛争解決には平和的収拾を徹底する、との法の支配の3原則を強調しました。

  正論です。力による現状変更を許さないのなら、法の支配を重んじるという共通の土壌をつくるしかありません。そのためには、ケースによっては国際司法裁判所(ICJ)を通じて法的に決着をつける覚悟が必要です。

  ところが、3月31日、「南極における捕鯨」訴訟の判決において、日本の南極海における調査捕鯨の許可証を取り消し、今後の発給を差し控えるよう命じられました。本判決は、先史時代から今日まで捕鯨文化を代々伝承してきた我が国にとって、「外交的敗北」です。また、シー・シェパードなどの過激な反捕鯨団体による極めて危険な海賊行為が、あたかも正当化されるかのような印象を全世界に与えかねず、政府の責任は極めて重いといわざるをえません。

  私は、2回、IWC(国際捕鯨委員会)年次総会に出席したことがあります。1995年はアイルランドのダブリン、2007年は米国のアンカレッジでした。科学的根拠なしにただ反対を唱えるのみの反捕鯨国に対し、日本は長年の研究成果やデータをもとに極めて論理的に論陣を張っていました。議論は、常に日本の圧勝でした。しかし、IWCは残念ながら過激環境保護団体の影響力が強く、理性ある国際会議の場とはいえませんでした。

  国際司法裁判所は、合理的な判断を下す場であると期待していただけに、このたびの敗訴はショックです。本判決に至った原因について、政府は真摯に反省しなければなりません。法的闘争の準備もきちんとせず、勝てるはずの裁判で負けるような国が、法の支配を主張しても説得力がありません。

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