かわら版 No.940 『経常収支』
2014/02/242012年8月10日、私が政治生命を賭けて取り組んだ「社会保障と税の一体改革」関連法が成立しました。その御礼と慰労を兼ねて、8月28日、最大の功労者である藤井裕久、与謝野馨両大先輩を総理公邸にお招きして会食しました。
藤井先生は民主党税制調査会会長として、困難を極めた党内の意見集約を果たし、民主・自民・公明による3党合意の交渉役を務めていただきました。私を精神的にも一貫して支えてくれました。与謝野先生は法案の骨格となる「社会保障の充実・安定化と財政の健全化を同時に達成する」という成案のとりまとめ責任者でした。病と闘いながら重たい職責を果たし続けてきた不撓不屈の精神には頭が下がります。
大仕事をやり遂げた達成感に浸りながら、なごやかに食事が進みました。そして、お開きの間際になって、与謝野先生が1枚のメモを私に手渡しました。ご病気の関係で声が出にくい状況だったので、メモにまとめられたのだと思います。そこには次のように記されていました。
2020年頃にあらゆる問題が解決困難になる。例えば、
⒜日本の財政
⒝日本の経常収支
⒞資源(石油を含む)の調達困難
⒟競争力低下・産業空洞化・高失業率
⒠食糧問題の深刻化
⒡ユーロの弱体化
等々、日本の直面する問題は多岐にわたる。
与謝野先生のご指摘は、ズバリ的中しつつあります。1月の輸出額から輸入額を差し引いた貿易赤字が、単月としてこれまで最大の2兆7900億円となりました。貿易赤字は19か月連続です。従来なら円安が続くと輸出が伸びるはずなのですが、足元では化石燃料を大量に輸入していることもあって、貿易収支は赤字になっています。
経常収支は所得収支が黒字なので、直ちに赤字に陥るまでには至っていませんが、将来の経済状況によっては赤字への転落も否定できません。国内で資金調達が可能なのは、経常収支の黒字が支えているからです。それが崩れれば国債の金利上昇につながるでしょう。わが国が財政収支と経常収支の「双子の赤字」の時代に突入するならば、2020年はオリンピック開催どころではありません。
与謝野先生が指摘した⒜~⒞のリスクは、実は相互に関連しているのです。⒝の将来の経常収支の赤字転落を最大のリスクとして捉え、そのリスクを念頭に置いた財政運営と長期的な視点からのエネルギー政策の構築が重要です。
安倍総理及びその周辺が、そのような大局観をもっているようにはとても思えません。