かわら版 No.935 『殿』
2014/01/16細川護煕(もりひろ)元首相が、東京都知事選に出馬することになりました。ふと思い浮かんだ言葉は、去年の流行語大賞「じぇじぇじぇ」でした。でも、いつまでもポカンと口を開けて驚いている暇はありません。何せ今月23日が告示ですから…。無所属で立候補するご意向ですので、足手まといにならぬように勝手連として全力で応援するつもりです。
細川元首相は、熊本県知事を経て、1992年に日本新党を結成しました。私は、細川氏が松下政経塾の評議員であったことで知己を得、同党結党に参画しました。そして、そのお蔭で翌93年に衆院初当選を果たせました。ですから、細川氏は私の政治の師の1人なのです。
細川氏は元来、小さな政局には全く無関心で大局を見据えて行動する人です。20年前のドンキホーテのような挑戦も、固くて分厚い「55年体制」という岩盤を打ち壊すためでした。
今般の知事選では、「脱原発」を旗印に戦うようです。野田政権が閣議決定した「2030年代に原発ゼロをめざす」とした「革新的エネルギー環境戦略」ですら生ぬるいとお考えだったようですから、現在の安倍政権にはもっと我慢がならないのでしょう。おそらく、原発を政治の問題ではなく文明の問題として社会が受け入れるかどうか、エネルギー最大消費地の東京都民に迫る覚悟なのではないでしょうか。エネルギー政策は都政の争点ではないと批判する人もいますが、花のお江戸で文明の選択を問う意義は大きいと思います。
ただし、この単一の政策だけを振りかざし、小泉元首相と連携して劇場型デモクラシーを再現するだけなら、さすがに現実主義の私はついていけません。なぜなら、都政には様々な政策課題がありますし、東京五輪の準備のためには国際感覚も求められるからです。幸いにして、細川元首相は自治体経営の経験もありますし、国際性も有しています。都民が関心をもっているテーマについては、すべて説得力をもって語れる素養があると思います。
私は96年に落選し、4年近く浪人しました。その間、資金繰りには悪戦苦闘しましたが、細川氏はいつもサポートしてくれました。私が09年の民主党代表選に勝利した時は、息子が運動会で1等賞をとったみたいに喜んでくれました。総理就任後も国難ばかりに直面しましたが、細川氏はその度に親身なアドバイスをしてくれました。私が総理を辞めた後、細川ご夫妻は私たち夫婦と長浜博行前環境大臣夫妻を夕食会に招き、しみじみと慰労してくれました。
殿の親心には、何度も接してきました。その殿が捨て身の戦いを決意したのであれば、決して見殺しにはできません。